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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

“ラストワンタッチ”のリアル店舗の意義とは? 求められる自社資産の棚卸し

集客と販売の両側面で発展するテクノロジー

 最後に、小売業で活かせるテクノロジーについて触れておきます。これはたくさんの種類が次々と出てきている状況なので、ここまで解説したような足固めをしっかりとした上で、自社に合った観点のテクノロジーを把握して選択すればよいかと思います。

 小売業でのテクノロジー活用は、大きく「集客」と「販売」の2つの側面があります。このうち、まず集客については前述のブランド資産がベースになると思いますが、加えて顧客データを昔より格段に収集しやすいことに注目したいです。オンラインとオフラインの融合で顧客IDを一元化し、サードパーティーのデータも掛け合わせれば、広告配信もほぼOne to Oneになっていきます。

 それは既に現存の技術で可能なので、今後は精度の向上と、むしろそのアプローチが生活者にとってうっとうしく思われないような配信がカギになると考えています。端的に言えば、モーメントを捉えて“まさに今欲しい”というタイミングでオファーすることが重要です。

 ここでも、前述の倫理観が求められると思います。目先の売上ではなく、あくまでも顧客を第一に考えた振る舞いが、将来のファン作りにつながるのではないでしょうか。

 もうひとつの「販売」については、キャッシュレス化や無人店舗など、様々な切り口で小売業向けのテクノロジーが発展しています。デジタル化が遅れていた業界ではありますが、BtoBの市場としては広大なので、各ベンダーや代理店などが小売業向けのシステムやサービスを次々とリリースしています。

 各論的にいくつかのトピックを挙げておくと、これから注目なのは「決済」「店舗体験」「VR」の3つだと思います。まず決済は、昨年末から今年にかけて複数のプラットフォーマーのサービスが始まっており、選択肢が拡大している状況です。まだ、どこが覇権を獲るのかもわかりませんが、いずれにしても生活者が使いやすいものに収束するはずなので、小売業としてはそれにフィットさせていくことがポイントになります。

 店舗体験は、前段のデジタル接客とも密接ですが、「モノを買って持ち帰る」という機能そのものが変容していっています。“ショールーム化”という言葉が出てきた頃は、店舗にとってはマイナスの意味合いで使われていましたが、直販ECなどの動線さえしっかり整備しておけば、むしろ「モノを見てECで決済し配送手配」という方法もあり得ます。大きな箱や袋を持ち帰らずに済むので、それも顧客のメリットになります。

VRで店頭体験を充実 ライブコマースにも可能性

 VRに注目しているのは、2020年を目処に5Gの普及が始まることで、通信環境が飛躍的に改善される見込みがあるからです。今も少しずつ活用され始めていますが、回線速度の関係でスムーズさに欠けますし、商品を映し出しても平面的です。それが3Dに近い表現が可能になるので、たとえばVRを通してオンラインで商品の色違いなどのラインアップを確認し、最終的に絞り込んだものだけを店舗に触りに行く、といった行動が可能になります。

 どうしても、リアル店舗はスペースや家賃などの制約を受けるので、VRをうまく取り入れれば「モノを実際に触れる」リアル店舗の利点と、「無限に在庫を置ける」オンラインの利点を掛け合わせて、より良い買い物体験を提供できると思います。

 また、今進みつつあるライブコマースも、回線速度が上がれば見やすくなるので、成果が見込めそうです。ライブコマースは、前述のように社内HRの棚卸しによって得意な人がいれば任せて、売上やファン作りにつなげることもできそうです。

 ただ、繰り返しになりますが、いずれのテクノロジーを導入するにしても前提となるのは自社の「ブランド資産の棚卸し」だと考えています。その棚卸しの過程で、自社の顧客が本当に望むものはなんなのかも見えてくるはずです。テクノロジーありき、あるいは競合が導入しているからといった外的な理由でシステムを選んでしまうと、顧客への価値提供にならず、売上にも貢献しない……といった事態にもつながりかねません。

 マーケティング戦略を設計するということは、取捨選択が求められます。その判断の拠り所になるのが、ブランディングに直結する自社の強み、すなわち顧客への提供価値です。遠回りのようですが、その部分を徹底的に掘り下げることが、各種のテクノロジーを味方につけてさらなる成長を実現する土台となると思います。

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この記事の著者

藤原 義昭(フジハラ ヨシアキ)

株式会社300Bridge 代表取締役
経営層を対象に経営、マーケティング、デジタルで企業成長の角度を上げるサポートを行う会社である株式会社300Bridgeを経営。KOMEHYO HDでは全社マーケ・DXを統括し、EC事業をゼロから約100億円規模に育成させた。ユナイテッドアローズでは最高デジタル責任者として1300億...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:38 https://markezine.jp/article/detail/30864

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