世界の土壌で進化するジェンダーマーケティング
グローバル視点でも同じ流れは起きています。世界最大級の広告祭と言われる「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下、カンヌライオンズ)」では、以前より地球環境問題、発展途上国の戦争や貧困をテーマにした広告が評価されてきました。
近年ではLGBTや人種差別などのダイバーシティ問題も増えてきており、2015年にはジェンダー課題に取り組む広告を表彰する部門“Glass: The Lion for Change”(通称:グラス部門)が設立されました。
「ジェンダーマーケティング」への関心が高まったのは比較的最近ではありますが、国内外の最新事例を見ていくと、ジェンダーマーケティング自体がどんどん進化していることがわかります。私はその進化を、「ジェンダーマーケティング1.0=『配慮』のマーケティング」と、「ジェンダーマーケティング2.0=『行動』のマーケティング」という2つのステージに分けて捉えています(図表1)。
ジェンダーマーケティング1.0=「配慮」のマーケティングは、すべてのブランドが意識するべきジェンダー問題に対する姿勢です。有害なステレオタイプを助長していないか、差別的表現になっていないか。炎上リスクを回避し、社会に悪影響を与えないための最低限のチェックです。
一方、ジェンダーマーケティング2.0=「行動」のマーケティングは、積極的にマーケティング活動を通して、社会に具体的な変化を起こすことを目指すものです。この「配慮」するだけでなく、「行動」を起こしていこう、という流れが日々大きくなってきていることを感じています。そして、この取り組みは、ブランドに根付いた課題を発見し設定することで、大きな効果が期待されます。
ジェンダー課題は、意外と社会の様々なところに潜んでいます。「うちは、関係ないかも」と思っていても、よく調べると業界の中に問題が発覚したり、新しいターゲットを設定できたりすることがあるかもしれません。
日本におけるジェンダー課題
では、どのように「ブランドに根付いた課題」を探すことができるのでしょうか。詳しくは後述しますが、その前に、現在の日本におけるジェンダー課題の全体像を見てみましょう。大きく4つの領域があります(図表2)。
(1)簡単には変えられないルールとして社会に影響を及ぼす、法律・制度に現れる課題、(2)“常識”として押し付けられる、社会通念・メディアに現れる課題、(3)自分の中にある固定概念による課題、(4)セクハラやバイアスなど対人関係に現れる課題、の4つです。どのような課題があるのかをざっくりとでも知っておくことで、課題設定やアイデア発想に役立ちます。
図中の円を描く薄い矢印は、ジェンダー課題はそれぞれが複雑に影響し合っていることを示します。正確なカテゴリー分けは非常に困難であり、この図にも賛否両論あるかもしれませんが、より多くの人にジェンダー問題に興味関心を持ってもらい、解決に向けて思考するきっかけになることを願って、シンプルさを優先しました。
