オウンドメディアの存在意義
――昨今、オウンドメディアを閉鎖する企業が出てきています。特にBtoC企業においては、コンテンツマーケティングの取り組みの売上への貢献を示しにくいという課題に、多くのマーケターが向き合っています。「ネスレアミューズ」の運営においては、このような課題をどう乗り越えてきたのでしょうか?
出牛:この課題については、私たちも常に向き合い続けています。コンテンツマーケティングに取り組むにあたって、避けられない課題でしょう。弊社の場合は、売上への貢献といった数字で可視化しにくい領域も、できるだけ検証できるように努めています。また、本来の目的を見失わないことも大事です。
具体的には、弊社の「ネスレアミューズ」に来訪した方と訪れていない方で、弊社製品の購入金額がどの程度異なるのかを、定期的に検証しています。そして実際に、来訪された方の購入金額のほうが高いことが、調査を通じて明らかになっています。
デジタル施策の特徴はデータが見れることですが、見れるデータも変化しています。年々データは増加し、深度も増しています。溢れるデータの中で、何を見て、何を見ないのか。次のアクションにつながるデータを選び評価する視点が、マーケターには今求められています。
――デジタルはたしかに可視化できることが強みですが、すべてを可視化できるわけではありません。データで捉えられないけれども重要なことは、どうやって社内外に示しているのでしょうか?
出牛:「ネスレアミューズ」はコミュニケーションのハブとして、様々なコンテンツと複数の事業部が関わりながら、一つのプラットフォームとして存在しています。なので、まずは全体のプラットフォームとしてワークしているのかという視点で評価しています。
その前提があった上で、「ネスレアミューズ」を通して関係を築いてきた顧客の方のほうが、実際の購入金額が高いという検証をしています。さらには継続して関係がある方は購入金額が伸び、関係が途絶えてしまった方は停滞する傾向にあります。
企業として投資をしているので、その効果を判断されるのは必須です。継続した投資をしていく上でも、全体的な目的と事業貢献の評価、その双方を追い、適切に開示していくことが説明責任だと認識しています。
2020年の挑戦
――2020年で10周年を迎えるにあたって、今後新たに挑戦したいことはありますか?
出牛:先ほどもお話ししましたが、何のために「ネスレアミューズ」があるのか、その存在意義は引き続き明示していきます。これは会社のビジョンにもつながってくるからです。
企業にとってのオウンドメディアの存在意義を追求すると、その先には間接的・直接的な事業への貢献があります。ECサイトとは異なり、直接的なCPAやROIで見てしまうと、当然評価しづらい。でも、そこに甘んじるのではなく、プラットフォームとしての評価といった切り口でのビジネスへの貢献を念頭に置き、継続した運営に取り組んでいきます。継続しているからこそ、ここはより注力していく必要があります。
一方で、対消費者の方、会員の方々に対しては、選び続けてもらう努力をしなければいけません。新規の会員を増やすことは当然大切ですが、会員の方とより深いエンゲージメントを構築していく取り組みはさらに注力したい。コンテンツを起点に継続的な関係を築き、ネスレのファンになっていただくために、認知だけではなく、各ブランドへの理解、関心やお客様にとってのブランド体験を強化していきます。