デジタル時代、人間自身がAIで操作できる「情報」になる
Google米国本社副社長・日本法人社長などを務めた村上憲郎さんの夢は、サイボーグになることらしい。「そう、永遠に生きること。僕の自己意識をシリコンの上に転移することだね」と電通総研のインタビューで彼は即答した。
このインタビューで村上さんは、レイ・カーツワイル氏との思い出話をしてくれた。1980年代にボストンの人工知能学会で会っていて、二人は友人らしい。この二人は同じ年で、村上さんがGoogleを退職した後に、カーツワイル氏がGoogleに入れ替わるように入社したらしい。
『シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき』でカーツワイル氏は、「我々はサイボーグになっていく<中略> 二〇三〇年代までには、人間は生物よりも非生物に近いものになる」と書いている。
また、フランスを代表する経済学者であり思想家のダニエル・コーエンは、映画『ブレードランナー』(1982年)を引き合いにして、ポスト工業化社会では、人間は半分情報になると予見している。以下に引用したい。
「デジタル経済では、まさに我々自身がデジタルになれ、と求められています。言い換えれば、我々自身が、AI (人工知能)によって操作できる「情報」になるということです。『ブレードランナー』のような近未来を描く映画は、人類とサイボーグとデジタル情報の最先端領域が融合した世界を見せてくれます。我々は半分情報になり、半分人間になります」
出典:『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』
「我々は半分情報になり、半分人間になります」と言われても、ピンと来ない人も多いだろう。だが、「AI美空ひばり」が話題になったことで、その意味するところがわかりやすくなった。
AERA dot.の記事「“紅白出場”AI美空ひばり『気持ち悪さ』の正体 法規制は必要か」で論じられている。人間が情報になるということは、その著作権(copy right)を、言い換えれば、「人間の著作権(Human Copy Right)」を、法的に定める必要性が生じる。
「20世紀は、映画や写真、音楽などを大量に複製できる技術が発達したことで『著作権』の考え方を変え、法制度化されていった。それが、21世紀は歌声や表情、会話する時のクセといった『人格』や『個性』が大量にコピーできる時代になる」