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定期誌『MarkeZine』特集

「欲しいCM枠を欲しいとき」に SASでテレビ活用は進化する

CMバイイングの選択肢を増やすSAS

――日本テレビが始めたASSは、今年の2月にSASと名称を変え、対応放送局も増えました。あらためて、SASについて教えてください。

 SASを簡単に説明しますと、「欲しい時期」「欲しい時間帯」のテレビ広告枠を、広告主が選んで購入できる仕組みです。ビデオリサーチが開発したシステム「枠ファインダ」を使います。枠ファインダでは、SASに対応するテレビ局のタイムテーブルと、購入可能な15秒ごとのCM枠、価格がすべてオープンになっています(図表1)。

図表1 「枠ファインダ」キャプチャ画面(タップで画像拡大)
図表1 「枠ファインダ」キャプチャ画面(タップで画像拡大)

 透明性のある設計を心がけており、CMのセールス情報がここまで公開されるのは、初めてのことです。

 しかも、枠ファインダは申請して登録すれば、無料で使えますし、一部データも無料で見られるので、是非一度、利用して色々触って欲しいです。

 広告主にSASをご利用いただくメリットは、大きく2つあります。1つは、15秒1枠から購入できるため、ご予算に合わせて、必要な枠のみを選べることです。空き枠があれば、60秒以上のCMにも対応できますし、ストーリー性の高い長尺CMを、日時とタイミングを指定して放送するようなこともできます。

 2つめのメリットは、デジタルキャンペーンを代表とする、他メディアとの連動です。従来のスポットセールスでは、CMが放送されるポジションが放送開始日の直前の、案出し時点まで不明でした。対して、日付とポジション指定が可能なSASをご利用いただくと、キャンペーンCMの放送後すぐにTwitterでも動画広告を出すようなプランニングができます。

 また、CMの放送タイミングが早い段階でわかっているので、たとえば保険や通販のコールセンターの人員マネジメントにも工夫がしやすくなります。さらにビデオリサーチ、インテージ、CCCマーケティング、TVISION INSIGHTSなど、契約データベンダーから提供されたオーディエンスデータを参考に広告枠を選べるので、たとえば「動画配信サービスの利用者のうち、Huluを使っている人」のようなターゲティングも可能ですから、他メディアとの連動によっては広告効果もさらに上がるはずです。

今年の2月より、テレビ東京、フジテレビ、TBS、そして日本テレビ系列局の読売テレビ、中京テレビが、SASに参加されています。各局とも、SASのような枠売りセールスを自発的に検討されていたところ、日本テレビの取り組みに意義を感じてくださったのではないかと思っています。参加局が増えたことにより、枠ファインダの機能も増えました。

 たとえば、「3つの局でF1をターゲットに、10時から23時の間で、3,000GRP出稿したい」のような条件を指定すると、局をまたいだプランニングがまとめてできます。もちろん、広告会社と広告主の担当者が一緒にタイムテーブルや枠情報を見ながら「新商品の発売に合わせて、この枠を買いましょうか」といったプランニングの打ち合わせにも使えますし、枠ファインダ上では、無償データを使った分析や、アカウント間でのカート情報の相互共有もできますので、容易に出稿計画をご検討いただけます。

――広告主のニーズに合うだけでなく、CMバイイングの業務が効率的にもなりますね。しかし、従来のタイムとスポットのセールスに影響しないのでしょうか。

 それはありません。SASは、タイムとスポットセールスから販売時期が独立しています。7月のセールス枠を例にすると、SASのセールス期間は5月からの約1ヵ月間。それ以降は、通常のスポット枠として販売しています。すると、「良枠だけ買われてしまうのでは?」と心配の声をいただくのですが、現状その問題は起きていません。なぜなら、価格で枠の販売をコントロールしているためです。つまり、需要を見て枠ごとに適正な価格を考えていくレベニューマネジメントをしており、スポット枠を指定購入する「のみどり」よりも、価格は抑えています。

 場合によっては価格が高い印象を持たれますが、広告価値も高い枠ですから、デジタルキャンペーンと連動させてインクリメンタルリーチをあげ、ROIの良い広告効果を得られることもあるのです。またオーディエンスデータを活用いただくと、自社にとっての良枠が調査でき、納得感をもって購入することができます。タイムとスポットセールスの長所を活かしながら、時代によって変化するスポンサーニーズを反映したSASがある。CMバイイングの選択肢が増えたと考えていただけたらと思います。

三方良しの好循環を作る

――テレビCMは、大きなリーチが獲得できる分、細かな分析がしづらいデメリットがありました。SASは、プランニングの段階からターゲットを絞り込んだり、データが豊富だったりと、統合アトリビューション分析にも活用できますね。

 CM枠を視聴率だけでなく、様々なデータで評価できるところが合理的でおもしろいと思っています。また、1,000人に対するリーチを考えたとき、デジタルのCPMとCMの枠単価であれば比較がしやすく、SASはデジタルとも親和性が高いんです。SASを考案するとき、海外の広告セールスにとても影響を受け、参考にしています。海外では、良いコンテンツを作り、広告枠の価値を高めている。視聴率保証もするので、アクチュアルセールスができているんです。

 その他にも、放送波の在庫とデジタルの在庫をパッケージ化して、リーチの拡大を追求したビジネスを行っていたりもします。デジタルとの親和性が高いセールスですので、システマチックな、データドリブンセールスを高度に推し進めているわけですし、アドレッサブルセールスやコンテクスチュアルセールス、さらにはショッパブルセールスなど次々に新しい広告商品を生み出してもいます。それどころか、「テレビ広告枠はデジタル媒体の広告枠よりもプレミアムだ」と称して差異化して、GAFA等に対して優位なポジションを取っていこうとしています。

 実は、日本のCMの価格は、海外に比べて3分の1から5分の1くらいと言われています。逆に考えると、価値を高める余地がまだまだあるということ。海外ではCM枠を減らす傾向にありますが、CMの価値が高まっているので、売上は下がっていません。また海外では広告枠の価値を高めることで得た利益が、コンテンツの制作費に還元されてもいます。AmazonやNetflixは、多額のコンテンツ制作費を投資しています。同様に我々もさらに良いコンテンツを数多く作り、視聴価値を増し、広告価値を上げ、結果として広告主のメリットも高まるという、良い循環を作っていきたいです。それがテレビ市場にとって非常に重要なことだと思っています。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:44 https://markezine.jp/article/detail/33437

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