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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Spring

定期誌『MarkeZine』特集

何度も買いたくなる商品・サービスに必要なこと

企業に「習慣化」はできるのか?

 朝起きたときに、あなたがしている習慣は何でしょうか? 顔を洗って、歯を磨いて、パンを焼いて、洗濯機を回して……様々な習慣があるはずです。家を出てから、夜寝るまでも、多くの習慣があります。

 これらの習慣の1つひとつが、様々な企業の商品やサービスで支えられています。たとえば、朝に顔を洗うことを考えてみましょう。洗顔料、タオル、化粧水、乳液など様々な商品を利用します。蛇口をひねって水を出しますし、寒い日はお湯にするかもしれません。気分をシャキっとするために、音楽を聴きながら顔を洗うかもしれません。このように、商品だけでなく、水道、ガス、音楽配信などのサービスも利用しています。

 朝、顔を洗うことは多くの人が毎日行う習慣です。ビジネスの視点から言い換えると、継続購入を促すには、このような習慣の中で選択される商品やサービスになることが重要というわけです。また、一口に習慣と言っても、様々なタイプがあります。朝に顔を洗うことは昔から続いていて、かつほとんどの人が行う習慣ですが、特定の人が行う習慣(例:乳児がいる家庭での哺乳ビンでミルクをあげるという行為)や、年に1回しか行わない習慣(例:年賀状を送ること)などもあります。

 では、企業は、自社の商品やサービスを通じて、意図的に「習慣化」を促すことができるのでしょうか? 考えてみると、私たちが普段行っている習慣の中にも、実は企業が手掛けたとされる様々な習慣が存在しています。

 たとえば、節分に恵方巻きを食べるという習慣があります。元々節分に太巻きを食べる風習が江戸時代から一部の地域にありました。そこに着目したコンビニエンスストアチェーンが「恵方巻き」というキーワードで広げたというのが現在の習慣につながっていると言われています。確かに、恵方巻きを買うときに、そもそもどんな意味があるのか、あまり深く考えずに、習慣として購入している人も多いはずです。

 また、朝にシャンプーで髪を洗うという行為も多くの人が行っている習慣です。これは、1980年代に企業が広げたと言われています。他にも、クリスマスにチキンを食べる、仕事中にペットボトルでコーヒーを飲むなど、なにかしらの購入に結びつく習慣は、企業が手掛けて広がったものが多いのです。

 長い期間続いている習慣を変えるのは難しいですが、チャンスは必ず存在します。習慣も一生続くとは限らないので、古い習慣が衰退するタイミングを見計らって、新しい習慣へのスイッチを促すのです。

出典:『カイタイ新書―何度も「買いたい」仕組みのつくり方―』博報堂ヒット習慣メーカーズ 著、中川悠 編著、秀和システム、2020年4月(タップで画像拡大)
出典:『カイタイ新書―何度も「買いたい」仕組みのつくり方―』
博報堂ヒット習慣メーカーズ 著、中川悠 編著、秀和システム、2020年4月
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「習慣化」を商品やサービス開発に落とし込む方法

 それでは、私たちが開発した「習慣化」のフレームワークについて説明します。

 このフレームワークの開発に向けて、様々な企業とともに、習慣化に向けた実験的な取り組みを行ってきました。具体的には、フレームワークの仮説を何パターンも作り、実際にそれぞれのフレームワークで習慣化を考えてみたのです。「このフレームワークだとアイデアが出にくい」「このフレームワークだと生活者ニーズを捉えきれない」など試行錯誤を繰り返しました。様々なフレームワークを試した結果、考えるべき大きな要素は以下の3つに集約されることがわかりました。この3つを順番に考えていくことが、私たちが考える習慣化のフレームワークです。

 この3つの頭文字を取って、PAC(パック)フレームと呼んでいます。

出典:『カイタイ新書―何度も「買いたい」仕組みのつくり方―』博報堂ヒット習慣メーカーズ 著、中川悠 編著、秀和システム、2020年4月(タップで画像拡大)
出典:『カイタイ新書―何度も「買いたい」仕組みのつくり方―』
博報堂ヒット習慣メーカーズ 著、中川悠 編著、秀和システム、2020年4月
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(1)Prediction 習慣を予測する

 世の中で起こっている大小様々な習慣を捉え、次に来る習慣を予測するというものです。習慣にはトレンドがあって、これから広がるであろう「兆し習慣」と、縮小傾向になってきた「衰退習慣」がありますが、まずは「兆し習慣」を探し、その裏にある「衰退習慣」をあぶり出します。そして、「兆し習慣」の中心にいる人たちを探り、その習慣を続ける理由=「習慣インサイト」を深掘りします。

(2)Addiction 習慣を設計する

 Predictionであぶり出した「兆し習慣」と自社の商品やサービスを組み合わせた際に、新しくどんな習慣が作れそうなのか? という観点で「習慣化コンセプト」を考えます。

 またここで重要なのは、習慣化コンセプトという概念にとどまらず、実際にどんなことをしてもらうのか? を具体的に設計することです。そのために「習慣化ループ」というテンプレートを活用します。そして、それを形にする「習慣化4P(Product,Price,Place,Promotion)アクション」を作ることが、ここのゴールです。

(3)Conversation 習慣を広げる

 最後に、どうやって習慣を生活者に広げていくのか? そのために私たちが重要だと考えたのは、生活者同士の会話を作るということです。会話は発信者と受信者から成り立ちます。まずは発信者を増やすために「局所を攻める」ことを狙います。そのあとに、受信者に広げる「マス(大人数という意味)を攻める」という2つのアプローチで考えます。また、会話を生み出すにはコツがあります。どのような考え方で会話を生み出していくのか、そのポイントについて触れていきたいと思います。

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商品やサービス開発にデジタルをどう活かすか?

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この記事の著者

中川 悠(なかがわ ゆう)

株式会社博報堂 統合プラニング局中川チーム チームリーダー/ヒット習慣メーカーズリーダー
大学卒業後、電機メーカーにエンジニアとして入社。携帯電話の設計に携わる。その後広告会社を経て、2008年に博報堂入社。ストラテジックプラニング職として、商品開発、ブランド戦略、コミュニケーション立案に携わる。2015年に統合プラニング局のチームリーダーに就任。クリエイティブ・ストラテジストとして、戦略から戦術まで一貫したディレクションを行う。2017年にヒット習慣メーカーズ※を立ち上げ、顧客の習慣化による事業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:44 https://markezine.jp/article/detail/33655

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