社会的課題の解決と事業性の両立
白石:こういうダイバーシティの問題は、企業にとっては「売り上げにつながらない」と捉えられがちで、関わっていくことに難しさを感じている方も正直いらっしゃると思います。企業からのニーズにはどのように応えているのでしょうか。
西本:最近、様々な企業からコラボレーションをはじめ、教育支援に関わりたいというお話をいただくことが増えています。私たちの取り組みに限らず、妊活コンシェルジュサービスを手掛ける「famione(ファミワン)」は、小田急電鉄やミクシィへの福利厚生の一つとして不妊などの悩みを専門家に相談できる仕組みを導入しています。同社は他にもソニー、全日本空輸、伊藤忠労働組合などへもセミナーを提供しており、輪は広がりつつあります。
公共自治体では、昨年、渋谷区で11月22日の「いい夫婦の日」に婚姻届を出した人向けにリクルートが提供するセルフ精子チェッカー「Seem(シーム)」と、F Treatmentが提供する自宅で卵巣年齢チェックができる「F check」を無料配布するキャンペーンを行っていました。企業も行政も、だんだんとこの領域の課題解決に取り組み始めています。
白石:こうした問題って、先ほど「男性が責められがち」だという傾向のお話がありましたが、女性は歩み寄ったり理解し合いたいと思っていても、男性側がわかり合いたいと思っていないケースも実際は多くありますよね。世代によっては強い先入観や分断があったり、「人ごと」として突き放す姿勢を持つ方もいるでしょう。
そこは事業性と社会性の両立に大きな課題があるように思うんです。きちんと取り組むメリットがあって、企業もジェンダーの枠を超えて人材を活かしていきたいというニーズがあるならば、性の課題に向き合うことを社内外含めて企業価値の向上に貢献するなど、具体的なKPIを見せていきたいですよね。
西本:そこを突いていかないと、継続的な活動にはなりにくいと思います。元々私がPRパーソンからキャリアをスタートしたこともあって、既に生理や性的な内容に関連したプロモーションやマーケティング活動のサポートを始めています。これからはコーポレートブランディングや企業キャンペーンのニーズも高まるでしょうし、真剣に取り組むことで生活者と深い信頼関係を築いていくことができると思います。企業活動や収益に貢献できるということを示していきたいですね。
次ページでは、白石氏が今回のインタビューをもとに、マーケターに向けた具体的なインサイトをまとめています。こちらもぜひご一読ください。