コンテンツ×最適なチャネルで人の心と行動を動かす
――改めて、本実験のご感想をお聞かせください。
石塚:紙カタログの購買率、行動喚起率、新規入会者に対する効果が、Eメールに比べてこれほど大きかったことに驚きました。先生方によると、同様の条件の実験で購買にこれほど大きな差が出たことは珍しく、コンテンツの完成度の高さが影響していたことがうかがえるそうです。改めて、コンテンツには人を動かす力があるのだという手応えを感じました。
外川:集英社さんがカタログ用に企画されたコンテンツは、内容もデザインも大変完成度が高いものでした。しかしながら、その世界観をデジタル上でそのまま表現しようとしても、画面のサイズや色味の見え方といった制約を受けてしまいがちです。一方で紙媒体には、企画の持ち味やクオリティの高さを余すところなく表現できるという特長があります。今回確認された購買率などの違いについても、こうした紙媒体の特性がコンテンツの魅力をさらに引き立てた結果ではないかと考えています。
また、紙メディア、デジタルメディアによる購買の差が如実に現れたことや、どの層のユーザーに紙のカタログが響くかについて分析できたことは非常に興味深かったですね。また、ユーザーが購入をやめるタイミングやその要因についても、紙とEメールによる違いが明らかになり、おもしろいと感じました。
石塚:そしてこの実験の結果を受け、新規会員にはすでに紙のカタログを送付しはじめています。紙媒体でやっていることをそのままデジタルでやればいいということではありませんので、長年雑誌を制作してきたノウハウをうまく活かしていけたらいいですね。
中谷:デジタルであれば、お客さまのニーズに合わせてコンテンツを臨機応変に作り変えることもできます。ファッション誌のコンテンツとして、流行の変化や四季・気候のずれによる需要の変化にも、細かく対応できるといいですよね。“デジタル発・雑誌クオリティ”のコンテンツがあっても良いですし、それぞれの良さを掛け合わせていきたいです。
――最後に、デジタル×アナログの最適解を探るにあたって、さらに解明を進めていきたい点を教えてください。
平木:今回の実験では、「ついで買い」についておもしろい知見が得られた一方、当初明らかにしたかった「掲載アイテム数による購買の違い」について十分に分析しきることができませんでした。選択肢の数が多いとき、衝動買いをうながし購買数が増えるのか、または、迷うことで購買数が減るのか。さらには、購入数の増減によってどのような商品の選択が進んだのかといった購買の数と質の両面から、掲載アイテム数の効果を掘り下げて分析してみたいです。
外川:ユーザーごとの心理状態や会員入会の時期の違いによって、紙メディア、デジタルメディアのどちらが心理変容・態度変容に有効なのか、今後もより一層研究していきたいと思います。こうした研究が進めば、どのメディアをどのタイミングで活用すればユーザーをブランドのファンにできるのか、詳細なデータが集まり、実務にも活かせるより具体的な示唆を得ることができるはずです。
――本日はありがとうございました。
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