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生活者データバンク

食&エンタメに見る新しい日常

 本記事では、コロナ禍における食とエンタメの変化を調査データをもとに考察する。

※本記事は、2021年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』66号に掲載したものです。

コロナ禍で変わる食とエンタメ

 大きな真四角のリュックを背負って、街中を自転車で疾走するフードデリバリーの姿はこの1年ですっかり日常になりました。コロナ禍において、家の中での食事(内食)が増えましたが(図表1)、フードデリバリーの普及にともない、お取り寄せできるお店もすっかり豊かになり、今では本格的なエスニック料理など、様々なジャンルが手軽に自宅で楽しめるようになりました。

図表1 資料1:家の中での食事(昼食:内食率)2019年~2021年比較(タップで画像拡大)
図表1 資料1:家の中での食事(昼食:内食率)2019年~2021年比較(タップで画像拡大)

 また、テレビやパソコン、スマートフォンといったメディアとの接触時間も増えました。中でも、無料・有料を問わず、インターネットによる動画コンテンツの視聴は大きく増えています。

 今回は、コロナ下のやや窮屈な日常においても「多少支出を増やしてでも、豊かに楽しく」を実践している生活者を「食」そして「エンタメ=有料動画サービス」という視点からフォーカスしつつ描写していきたいと思います。「positive&proactive」に暮らしをシフトする生活者の姿はきっと様々なビジネスのヒントにつながるように思います。

いつでも美味しいものを自宅で

 エヌピーディー・ジャパンがリリースした「外食・中食調査レポート(※1)」によると、外食・中食市場全体の2020年1-12月計の金額市場規模が前年比18.3%減の一方で、出前(デリバリー)の市場規模は前年比50%増と大きく伸長しています。

 これまでのフードデリバリーサービスは最低購入金額が設けられていたりして、一部のファミリー層以外へはなかなか根付かず、そのイメージも「家事をひと休み」「ちょっとした贅沢」という日常とは離れたものになっていたのではないでしょうか。

 そこへUberEatsの参入や最低注文金額の廃止によって垣根が下がるとともに、宅配可能なジャンルや店舗の増加によってフードデリバリーサービスの魅力が一気に増しました。さらにはコロナ禍による外食をはじめとした外出自粛により利用者増を後押ししたと考えられます。

 では、弊社のターゲット・プロファイリング分析システム(生活者360°Viewer ※2)を用いて、「フードデリバリーサービス」を利用している人を詳しく描写してみましょう(図表2)。

図表2 フードデリバリーサービス利用者 プロファイリングデータまとめ(抜粋)(タップで画像拡大)
図表2 フードデリバリーサービス利用者 プロファイリングデータまとめ(抜粋)(タップで画像拡大)

【視点1】デモグラ・健康意識

 20代・40代にボリュームがあり、単身者が多くなっています。世帯年収・本人年収ともに非利用者より少ないものの、お小遣いとして自由に使える額は多いようです。また、一人暮らしのためか食事は不規則。お腹まわりなどやや緩んだ体型が気になるため、サプリメントなどで栄養バランスをとるように心がけている(運動は……あまりしない)。食生活の乱れは自覚しつつも、「改善する」という回答が出てこないところに食への楽しみ・こだわりがうかがえます。

【視点2】生活価値観・暮らしと食

 「今を楽しく過ごしたい」という気持ちが強く、時には現実を忘れてパーッと騒ぎたい、と考えている。静かでのんびり過ごすより、賑やかで慌ただしい都会がなんだか落ち着く。「食」の時間を重視しており、こだわりが強く、大切な楽しみの1つ、としているようです。コロナ下における自炊疲れというよりも、積極的に暮らしの中に楽しみを取り入れている様子が目に浮かびます。また、将来に備えるよりも今の生活を充実させることを重視している意識が強いことも、日々の食の充実に向かっている理由と思われます。

【視点3】消費意識・行動

 好きなことには派手にお金を使ってしまうタイプ。機能が充実していて、生活を効率的に・楽しくするものは惜しまず購入してしまう。高級感や豪華さが感じられるものを好み、ネーミングやパッケージから感じた効果効能に魅かれて商品を買ってしまう。財布の紐も緩く、「わかりやすいもの」に魅かれてしまうところから、興味関心をくすぐることができればトライアルしてもらいやすい人と言えるかもしれません。

まとめ

 フードデリバリーアプリの利用背景は一見すると「外食の代替」や「自炊疲れ」とも映りがちですが、自由にお金を使え、好きなことやこだわりのあるものには出費を惜しまないことから、「家から出ずともお店の味が楽しめる」≒「自分の時間を効率よく使いながら食という趣味も満たすことができる」というベネフィットを最大限に享受するのが本当の利用目的のようです。

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この記事の著者

田中 宏昌(タナカ ヒロマサ)

株式会社インテージ 生活者研究センター センター長

 1992年、電通リサーチに入社。1994年から電通の生活者データベース「d-camp」の開発に参画。2012年まで電通内の電通総研、消費者研究センターなど、社会および消費者研究セクションに駐在して社会潮流や生活者理解を起点に、さまざまな業界業種における広告コミュニケーション...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

森本 瑠奈(モリモト ルナ)

株式会社インテージ CBD本部 事業デザイン部 生活者研究センター
コンシューマーチーム チームリーダー

 2016年インテージへ新卒入社。2018年までアンケートモニターの管理・運営を担当。2018年から社内の膨大なファクトデータを用いた生活者のプロファイリング分析ツール 「生活者360°Viewer」の開発プ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/29 09:30 https://markezine.jp/article/detail/36555

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