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小島英揮氏と考える!オンライン時代のコミュニティマーケティング

【超・実践編】Salesforce 坂内本部長に聞くユーザーコミュニティの立ち上げから継承まで

 本連載では、Amazon Web Services(AWS)のマーケティング責任者として日本最大級のユーザーコミュニティをつくり上げた小島英揮氏が、コミュニティマーケティング先駆者をゲストに迎え、最新の知見や課題感を掘り下げる連続講座をレポート。今回のゲストは、Salesforceのユーザーコミュニティ「Trailblazer」で、日本のコミュニティマーケティングをリードしてきた坂内明子本部長です。コミュニティ立ち上げ、チームでの運営への移行、オンライン対応などのポイントについてうかがいます。

40以上のグループ、150名以上のコミュニティリーダーが活動中

本連載では、パラレルマーケター/Still Day One 合同会社 代表社員 小島 英揮氏が、早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」にて実施する連続講座の様子をレポートします。

小島:はじめに、Salesforceのユーザーコミュニティ「Trailblazer(トレイルブレイザー)」の背景や目的について教えてください。

坂内:Trailblazerは、2016年からCEOのMarc Benioffが強く打ち出しているコンセプトです。

 このTrailblazerという言葉は、Salesforceを介して企業や社会を改善、改革しようとする方々を表します。ポイントは、現場で第一線で進めているSalesforceのプロジェクトマネージャー、システム管理者、開発者の方々に主に焦点を当てている、ということです。その根底には、「顧客企業だけでなく、個人や社会の成功も同時に達成すべき」と考える、Salesforceにおけるカスタマーサクセスの考え方があります

 日本では、現在23の自走コミュニティを含む43のグループが立ち上がり、コミュニティリーダーは150名を超える規模になっています。

講義資料より
講義資料より

小島:Trailblazerの独自性は何でしょうか。

坂内:Trailblazerは、ユーザー同士が協力して課題を解決する自主活動です。その中でもある程度の規制があり、当社が運営母体であるユーザー会と、Salesforceに興味のある方であれば誰でも気軽に入れ、最低限守るべきCode of conduct(行動規範)はあるものの、コミュニティごとの自由度を許容し、ユーザーに自律的に運営していただくコミュニティグループの2種類があります。

講義資料より
講義資料より

合意形成に1年半。開始後も他部門の協力が欠かせない

小島:2種類のグループがあるなかで、坂内さんはコミュニティグループのほうに従事されてきたのですよね。立ち上げは大変だったのではないですか。

坂内:社内外の合意形成には1年半かけました。当時のユーザー会はすでに軌道には乗っていたのですが、目標とする成長、カスタマーサクセスの実現に至るには難しい事実を示した上で、自律的なコミュニティが、営業、利用開始、継続など、各段階のボトルネックをどう解決し、どれだけの成果が見込めるかを説明しました。営業支援のシステムの会社なので、裏付けとなるデータが揃っていたのは幸いでしたね。

 ユーザー会企業への説明も自社役員や営業の協力を得て進めるなど、社内コミュニケーションのほうが多かった印象です。

小島:実際の効果はどの程度でしたか。

坂内:コミュニティ上でアクティブな顧客とそうでない顧客とを比較した場合、次のような違いが見られています。

・受注商談金額が2.5倍
・パイプラインが2倍
33%以上の製品活用度
・顧客離れを25%削減

 最初からここまで具体的な効果を想定して始めた訳ではありませんが、定量的な裏付けがあると、社内を説得しやすいです。

小島:コミュニティを立ち上げた後、成果を出すにも、他部門の協力が必要ですね。

坂内:はい。コミュニティをつくっても、ユーザーが自発的に入って活動してくれることはありません。ユーザーが、いつどのようなフォローを必要としているか把握し、関係部門にはたらきかけをしてもらう必要があります。たとえば、成約時に営業やインサイドセールスからコミュニティを案内してもらい、製品を活用し始めたら、カスタマーサクセスから電話などでフォローするなどです。

 自社全体や顧客の成功のためという大義名分だけでは、他部門は動いてくれません。その部門が何に興味があるかを考え抜いた上で、コミュニティ価値とのつじつまを合わせる、現実的な対応が必要です。たとえば営業なら「お客さまの支援を効率化し、新規のお客さま獲得に時間を割けるようになる」といったメリットを伝えることもあります。

小島:一方で、目指すものが異なる他部門との連携では、気をつけることもありますよね。

坂内:コミュニティの信用を損なう行いがないか注意します。たとえば、社内の別部門がある顧客をコミュニティのイベントに登壇させたい、コミュニティを売り込みの場に使いたい、といった場合、ガイドラインに抵触していないか、コミュニティで活躍や参画している方々が納得する内容かどうかは精査する必要があります。

 個人情報の目的外使用はグローバルのガイドラインで禁止されていますし、それ以前にコミュニティはユーザーのための場です。露骨にベンダーの利益のために利用すると信用を失い、大きな損失となります。ただし、他部門のこうした行動は自身が目指す目標のためであり、コミュニティへの理解不足によるものなので、きちんと説明して理解してもらいます。

小島:私も常々「コミュニティに売り込んではならない(Don’t sell to the community)」と言っています。「Sell through the community」、すなわち、コミュニティを通じて良い評判を広めてもらう方が、広がりも継続性もあると思います。

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この記事の著者

高橋 龍征(タカハシ タツユキ)

conecuri合同会社 代表社員

CSK(現SCSK)で営業、経営企画に従事後MBAを取得し、ソニー、サムスン電子での事業開発マネジャーやテック企業の共同創業を経て独立。14年を超える複数のコミュニティ運営を通じて、セミナーや研修の企画に携わり、年間200セミナーを形にした他、コミュニティ構築支援などに複業の幅を広げ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/07/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/36577

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