ユーザーの生活に根差したヤフーのデータ
ヤフーは、2019年に企業のビジネス課題解決を目的としたデータソリューション事業の提供を開始した。約5,000万人というユーザーボリュームと、ユーザーがヤフーの様々なサービスにログインし、生活のあらゆるシーンにおいてアクティブに利用する中で得られる、多面的なデータが強みだ。
ヤフーの寺田幸弘氏は、データソリューション事業において同社が最も重視していることとして「プライバシーに対する取り組み」を挙げた。ユーザーのプライバシーに配慮しながら、不正アクセスの管理なども行った上で、個人が特定されない統計データを分析・提供しているという。
ヤフーが提供するデータソリューションは3種。ヤフーの検索・位置情報データを分析できるデスクリサーチツールの「DS.INSIGHT」、データアナリストがヤフーの行動ビッグデータを分析・納品する「DS.ANALYSIS」、そしてヤフーの検索データを自社システムに直接連携できる「DS.API」だ。セミナーでは、これらツールを実際に用いて、コロナ禍の消費者インサイトの変化を語った。
「ラーメン」「焼肉」はコロナ禍でも需要高
寺田氏はまず、ヤフーが保有する位置情報データを使った分析機能「DS.INSIGHT Place」を用いて抽出したデータを基に、コロナ禍前後の人出について解説した。
平日22時台の新宿歌舞伎町における人出をコロナ禍以前(2020年1月)とコロナ禍以後(2021年1月)のヒートマップで比較したところ、人が集まっていることを表す赤色やオレンジ色がコロナ禍以後ではほとんど見られなかった。同様の現象が大阪の道頓堀付近でも確認され、グラフを見ると緊急事態宣言が解除された後も夜間の人出が回復していないことがわかる。
次に寺田氏は、ヤフーの検索データを使った分析機能「DS.INSIGHT People」で抽出したデータを用いてコロナ禍の外食ニーズを解説した。「地名+居酒屋」という組み合わせについて、検索量の増減をコロナ禍以前と以後で比較したところ、都心ではほとんどの地域で80~100%の減少傾向が見られた。
さらに、札幌・新宿・西船橋・梅田・名古屋・天神のデータを比較すると、札幌・西船橋・名古屋・天神では緊急事態宣言解除後に検索ボリュームが回復したのに対し、新宿と梅田は宣言解除後も検索は増えず、減少の幅も他の都市に比べて大きかった。
ただし、地名と一緒に検索されるキーワードによってはコロナ禍以後に検索が増えたものも。たとえば、「焼肉」や「ラーメン」は前年同月のデータと比較すると検索が増えているという。
これらの分析結果をふまえ、寺田氏は「ヤフーの検索データを活用すれば、コロナ禍においてもニーズがある業態を簡単に可視化できる」と語り、インサイトを捉えるにあたって活用する検索データの「切り口」を変えることの重要性を示した。