3つの手法の特色&現在地を紹介
高橋:まず(1)のFLoC(Federated Learning of Cohorts)は、GoogleのPrivacy Sandboxで提案されているコホートベースの広告手法の一つですね。コホートというのはブラウザを興味ごとにまとめたグループのようなもので、特定のコホートに対して広告を出せるようにすることで、Cookieが使えなくなった後にも、オーディエンスベースの広告出稿が可能になると期待されています(詳細はFLoC の概要 - Google Developers Japanを参照)。Criteoさんでも、取り組みが進んでいらっしゃるのでしょうか。
中村:はい。当社は今年3月下旬から7月中旬にかけて、FLoCのOrigin Trial(パブリッシャーや広告主、アドテク事業者、Web開発者向けのテストのこと)に参加し、サードパーティCookieの代替手段としてどの程度使用できるかを検討しました。その様子はブログ記事(英語)で発信しているのですが、現時点ではサードパーティCookieに近い成果が得られるという明確な証拠はなく、さらなる検証や改善が必要と判断しています。
ただいずれにしてもChrome以外のOSやブラウザへの対応が必要になるので、そうした状況も踏まえると、別の手段も並行して進めなければいけません。そこでカギになるのが、Cookieに依存しない形でのIDのグラフをデマンドサイド、サプライサイド双方と形成していくことだと考えています。

(撮影:関口 達朗)
新たに構築中の1st Party Media Networkとは?
高橋:それが(2)の1st Party Media Networkにあたるものですね。詳しく教えてください。
中村:これはコマースデータとAIを組み合わせたようなシステムで、ファーストパーティデータを収集・接続し、AIで最適化をかけることで、Cookieレスのターゲティングやリターゲティングを実行できるようにします。
私たちは以前から「Criteo ショッパーグラフ」というユーザーの購買に関するデータアセットの構築を進めていました。これまではある程度Cookieをベースにしながら、グラフを形成していましたが、今後は利用許諾の取れたファーストパーティーのIDやTrade DeskのUnified ID 2.0のようなIDソリューションを活用しながら、より精度を高めていくことになります。エンドユーザーにはデータの提供先や提供方法を選べるような手段を用意しています。

中村:また当社ではCookie問題が顕在化する前から、広告主や代理店には、Eメールをハッシュ化して共有する仕組みなどを提供してきました。これ単体ではユーザー個人を特定・識別することができないものになっていますので、引き続き活用ができると考えます。
高橋:ハッシュドEメールの取り組みはかなり以前から進めていましたよね。今のような状況を見据えていらっしゃったのかなと思いました。この1st Party Media Networkというのは、どこかのタイミングで活用が始まるのでしょうか?
中村:なにかを一斉に切り替えるというよりも、Criteoショッパーグラフをベースとして、どんどん1st Party Media Networkが構築されていくようなイメージが近いです。Cookieが使えなくなったらすべてが止まってしまう、ということにならないよう、今後も市場の変化に合わせて、有効と思われる手法を新しく取り入れていくことになると思います。