組織強化の観点では、どのような取り組みをしていますか?
組織は、日々成長していると感じています。グループが立ち上がったときは、Facebook、Instagram、そしてコーポレートサイトの運営のみでしたが、JBCにSNSチームを作り、海外向けの発信強化を目的にFacebookの英語アカウントを開設しました。2年目にはBIツールを導入したデータ分析やお客様からのSNSの投稿にリプライするなどのアクティブサポートをスタート。そして3年目には、旅コミュニティ「trico(トリコ)」を立ち上げるなど、常に新しいことにチャレンジしてきました。会社から「やりなさい」と指示を受けたわけではなく、主体的に考えて、必要な施策を始めている点もポイントです。自分たちがJALのSNSコミュニケーションを作ってきた、組織を成長させてきたという事実は、メンバーの自信にもつながっています。
社内でのリレーション強化については、“日頃からの協力”を大切にしています。私たちの役割は“発信”ですが、私たちが情報を持っているわけではありません。社内の情報共有の定例会に参加するだけではなく、自分たちの業務の範疇を超えるようなこと、相手から直接は求められていないようなサポートまですることで、協力体制が強化されていくと思っています。
たとえば、現在私たちが担当しているソーシャルリスニングは、もともとは違う部署が担当していました。以前はJALに関する数万件のツイートからネガティブ/ポジティブの比率を出し、多かったキーワードや反応の高かった話題を挙げるなど、定量的なレポートに留まっていました。もちろんこうしたレポートも重要ですが、本来ソーシャルリスニングは、定性評価に価値があるもの。お客様がJALに対してどんな意見をお持ちなのかを知るためには、機械的な処理だけでなく、すべてのオーガニック投稿に目を通したい。一人の方がぽろっとこぼした本音の中にリスクが潜んでいることだってあるかもしれないのです。
そこで、改めてWebコミュニケーショングループでソーシャルリスニングを担当し、すべての投稿から多い意見や気になる投稿をピックアップしたレポートを、毎日社内300人ほどにメールで配信しています。HTMLメールにすると、画像も見られるのでいいですよ。その内容に関して社内から相談があれば、さらにリスニングツールで絞り込み、掘り下げて分析していきます。ほかにも、情報発信の重要性が増してきたせいか、広報やSNSにまつわる相談をいろいろな部署からいただきます。ささいな困りごとでも、真摯な対応を心掛けたいですね。
山名さんと同じ立場で人材育成や組織強化に取り組む読者へアドバイスをお願いします。
リーダーが自ら動くことが重要であるとお話ししましたが、自分で何でもやってしまうと、人は育ちません。業務全体の2割まではサポートするけど、残りの8割は任せてみるというような、バランス感覚を持つことが大事ではないでしょうか。初めのうちこそサポートする割合が高いですが、「いつの間にかできるようになっている」というのが理想だと思っています。自転車に乗るときと一緒ですね。補助輪2つから始めて、1つ外して、最後はすべて外して。そんなふうに段階を踏んで育てれば、自力で走れるようになると思います。
そして、JALでもリモートワークを導入していますが、やはりチームに入ったばかりの頃の育成は、対面でのコミュニケーションが必要だと感じます。業務はリモートでできても、他の部署の仕事を知る、体感する機会はリアルな場でないとわかりません。出社して、社内の雰囲気を感じたり、雑談に耳を傾けたりして、初めて知ることもたくさんあります。近いうちにまた新しいメンバーを迎えることになっていますが、私を含めたメンバーが交代で出社してオンボーディングを行う予定です。中途採用でマーケティングキャリアを持った社員と、マーケティングの経験がない社員とではまったくバックボーンが異なります。人となりや環境を考えながらサポートすれば、自然と一人で飛び立てる日が来るのです。