社内のアクションをともなって、顧客体験を創出する
MZ:発想のきっかけは何だったのですか?
本田:コンビニにおいて揚げ物は定番商品ですが、生活者としては「どんな油を使っているのか、安全・安心なのか」というインサイトがあると思いました。
これは先ほど挙げた5つの方向性のうち4つ目の「食の安全・安心」に直結します。実際、店頭で使っているのはJ-オイルミルズさんと共同開発している良質の油です。ヒカキンさんが注目して動画にしてくれたことまで含めて、ファミマの安全・安心が広く伝わった企画になったのではと思います。
本田:今、顧客体験やCXという言葉に注目が集まっていますが、まさにご自宅でファミマの顧客体験を創出したという点でも、手応えがありました。他にも、2021年4月に開催されたプライドウィークに合わせてファミチキの袋をレインボーカラーにしたことなども、社内の皆さんのアクションをともないながら、お客様に新しい価値を提案する結果になりました。

MZ:MarkeZineでは2021年末に、ファミマの新しいプライベートブランド「ファミマル」について、The Breakthrough Company GOに取材しました。たとえばこちらの企画などが、電通さん以外のエージェンシーによる取り組みということですね?
足立:そうです。これはパッケージデザインの刷新とともに、「そろそろ、No.1を入れ替えよう。」というタグラインを軸にした新聞広告やOOH、テレビCMなどを含めた大きなブランディング施策になりましたし、売上にも貢献しました。
当時は、ファミリーマートには「ファミリーマート・コレクション」や「お母さん食堂」のほかにもいくつかプライベートブランドがある状態でした。分散していたので、なかなか認知を上げにくいことと、商品とブランドのイメージを時代に合わせて合致させるために、プライベートブランドを統合して刷新しました。
2017年に発売して大人気だった「リッチフラッペストロベリー」の再現も、とてもヒットしました。これも他のエージェンシー主導ですが、キャンペーン全体と同じタレントさんが登場し、統一感がありました。複数のエージェンシーが同じキャンペーンに関わりながら整合性が取れる体制を組めたのは、割とレアなケースだったと思います。

一つひとつの企画をおもしろく、強く、大きくしていく
MZ:では、ここまでの振り返りと、41年目の予定などを教えて頂けますか?
本田:単発のキャンペーンではなく、年間で伴走してクライアントの事業成長にコミットできたことに、私たちとしては多くの学びがありました。昨年末、周年企画に携わった方々にお礼のメールを書いたところ、宛先が100名を超えたんですね。そこまでの規模となるチームマネジメントの機会を得られたのも、稀有なことでした。
今年に関しては、周年の傘がない中で、電通が引き続き伴走できるパートナーになり得るのかというチャレンジでもあると気を引き締めています。
加藤:店頭という顧客体験の場で、どれくらい楽しんでもらえるか、あるいは安全・安心を感じてもらえるかを考えるのは、もしかするとこれまでの広告会社の業務のイメージが違うかもしれませんが、コミュニケーションの視点を前提に顧客や社内の方々の具体的なアクションを生み出すという仕事を重ねられたことは、これからの仕事にも生きる貴重な経験でした。
広告表現で培った言葉の力や、話題にすることなどは当然の前提としてありつつ、それを顧客体験にもっと生かすための企画をもっと提案していきたいですね。
足立:ファミマでは2022年も引き続き、5つの方向性を強化していきます。会社のイメージは一朝一夕では変わらないので、繰り返し継続的にお伝えすることが大事です。一方で、同じことをしていると飽きられてしまうので、ひとつひとつの企画はさらにおもしろく、強く、大きいものにしていきたいと考えています。最終的に、「ファミマはいつも活気があって、おいしくて、楽しくて、ちょっとお得」だと皆さんが思ってくれるようになるまで、まだまだ続けます。今年もみなさんに驚いて頂けるような企画が出てくると思いますので、ぜひご期待ください。
