全日本DM大賞の応募作品に見る、各社のDM活用状況
MZ:奥谷さんは「第36回全日本DM大賞(2021年)」の審査員も務めていらっしゃいましたが、応募作品をご覧になった感想や、全体の傾向についてお話しいただけますか。
奥谷:今年に関して言うと、コロナ禍2年目ということもあり、やはり各社でDMが再評価され、様々な形で活用されている印象を受けました。マスクを着けた生活であったり人と対面する機会が減少したりと、生活が窮屈な中だからこそ、心を豊かにするDMを送ることで、お客様とのつながりが強くなるケースも生まれています。
コロナ前後で比較すると、コロナ前はコミュニケーションメディアが多様化した反面、どのチャネルに注力するのか、メリハリがつけにくい部分があったと思います。コロナ後は対面など一部の接点が使いにくくなったことで、DMのように今使える接点に注力し、積極的にノウハウを蓄積しようとする企業が出てきているのでしょう。
たくさんの企業が、オンライン広告に対して高額なお金を払っていますが、自分事化してもらうこと、気に留めてもらうことがなかなか難しくなってきています。一方、顧客データベースが構築されていて、セグメントできた状態のDMは大きな効果を発揮します。今のうちにWithデジタルでDMを通したマーケティングスキルを身に着けられると、その会社のマーケティング組織は強くなりますし、マーケターとしてもステップアップできます。そのため若い人にこそ、DMに挑戦してほしいと思っています。
WithデジタルでDMを展開するために
MZ:デジタルを活かしたDM施策を行うには、やはりオンラインIDの構築と、顧客データベースがあることが前提ですよね。
奥谷:そうですね、まずは良質な体験提供を通して、顧客データベースを構築していくことが何より大事だと思います。
すでにある程度状況が整っているならば問題ないのですが、そうでないのならば、やるべきことはデータを取りに行くか、すでにあるところと手を組むかの2択です。
前者の場合、まずはデジタルのタッチポイントを作ることです。たとえばECを構築し、利用してもらうことで顧客データを取得していく。その際に大切なのは、商品を買ってもらうことだけでなく、お客様に「デジタルを通じたつながりを持つと便利だ」と思ってもらうにはどうすべきかを考えることが必要でしょう。後者では、たとえばメーカーの場合で言えば、小売業が持っている顧客データの活用や、ポイントプラットフォーマーとの関係を強化していくなど、工夫が必要になります。
MZ:別の観点では、シナリオやクリエイティブなど制作面で悩みを抱える企業もありそうです。これに対してはどんな解決策があると思われますか?
奥谷:DMは新しく出てきた手法ではなく、これまでに様々なノウハウが蓄積されてきた、歴史ある手法です。過去のDM大賞の受賞作品を本で読んでみたり、DMによる顧客とのコミュニケーション販促のプロもいるので、そういう専門家や先駆的な事例を出している方に話を聞いてみてはいかがでしょうか。
ほかにも、届いた郵便物から自分の心に刺さったものがあれば、その理由を探ってみることからはじめてみて、紙というメディアにおいてブランドをどう表現すると自分たちらしいつながり方ができるのか、考えてみるのもいいかもしれません。
全日本DM大賞の受賞作品を用いて、DM企画・制作のポイントを解説!
デジタル施策で思うような成果が出ない、様々なチャネルを掛け合わせてお客様とコミュニケーションしたい。そんな悩みを「デジタル×DM」でいかに解決していくか、奥谷氏と日本郵便の松本 俊仁氏が議論しました。こちらからホワイトペーパー「悩めるデジタルマーケターに捧げる“アナログの強み”『デジタル×DM』は、どうして成功するのか?」をダウンロードいただけます。