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ニールセンの調査に見る消費者のメディア消費と購買行動の変化。コミュニケーションにおける注意点とは

当初は一過性のもののように思われたコロナ禍と、我々は既に2年も付き合ってきた。この間に事業会社はもちろん、マーケターや広告会社も様々な試行錯誤をしてきた。今後、外出規制などが緩和していく中で、日本におけるポストコロナでのコミュニケーションはどうなるのか。「企業が意思決定する際に重要なのは、やはり正確なデータを用いて状況を把握すること」だと語るニールセンデジタル株式会社シニアアナリストの高木史朗氏が具体的なデータを用いて、ポストコロナのコミュニケーションの注意点を解説した。

デバイスの先に何人の視聴者がいるのかを意識する

 高木氏はまず、コロナ禍で起きた消費者のメディア視聴の変化に触れる。結論から言えば、この2年でデジタル化とメディア視聴の分散化が加速しているという。

「テレビも増加していますが、スマホ、タブレット、パソコンといったデジタルデバイスの視聴時間が非常に伸びているのが特徴的です」(高木氏)

 コロナ禍では在宅時間が増え、家の中でのエンターテイメントコンテンツが重要な役割を果たした。エンターテイメントに使用する時間を100%とした際、音楽、漫画、書籍、ゲーム、動画系などが占める割合の調査によると、ビデオやテレビ、ストリーミングなど動画関係が半数に近い45%を占める結果に。2020年から比較しても1年間で4ポイントも増加。エンターテイメントにおいても、動画視聴サービスの視聴が非常に重要だとわかる。

 2021年7~8月のデータを見ると、1年前と比べて視聴者数が大きく伸びていたメディアは、オリンピック関連コンテンツを扱っていたNHKやTVerといったサービスで、テレビ関連のコンテンツをストリーミングする人が増加していたことがわかる。中でも、年代ごとの伸びでは、18~34歳において前年比233%という数字が出ており、若年層でもサービスの利用が増加した傾向が見て取れる。

デジタルコンテンツ視聴率
デジタルコンテンツ視聴率

 テレビ系のコンテンツ以外にもNetflixやAmazon Prime Videoのような有料動画サービスの利用も増加し、2021年3月時点で前年3月から+6ポイントの36%まで利用率が上昇している。

 インターネット上でドラマや映画を視聴する機会が増えたことで、使用するデバイスも変わってきた。インターネット利用者全体を母数としたうち30%がテレビ画面からインターネットを利用している。年代で見ると若年層ほどその傾向が高く、37%がテレビ画面での視聴をしている。

 さらに絞り込んでSVOD利用者を母数にすると、テレビ画面で視聴する人が既に42%存在する。日本の特色として通勤通学時にスマホにて視聴する人が多いため、依然スマホが1位だが2位にテレビが続き、パソコンは3位だ。

 若年層がテレビ経由で使用する動画サービスは何か。10~20代における「各動画サービスのテレビからの利用率」データを見ると、Amazon Prime Video(9%)やNetflix(5%)のような定額制のサービスも多く使われてはいるが、YouTube(14%)、TVer(4%)やABEMA(4%)などの広告型コンテンツも見られていることがわかる。

各動画サービスのテレビからの利用率(10代-20代)
各動画サービスのテレビからの利用率(10代-20代)

 このような状況を受けて、インターネットにつながっているCTV(コネクテッドTV)の視聴は非常に浸透してきているのがわかる。「注意点は、若年層では共視聴が増加していることです」と高木氏は指摘する。

 今まで若年層は、スマホで自分の見たいコンテンツを1人で見る機会が多かった。しかしコロナ禍で、家族と大きなデバイスで一緒にコンテンツを見る状況が増えてきている。そのため、CTVでターゲティング広告配信をする際には、若年層の周囲で上の年代の人も共視聴している点を考慮したプランニングが重要だ。

オンラインで検討する層へのコミュニケーションが重要

 続いて高木氏は購買行動の変化に触れる。ここでの変化を端的に言えば、オンライン購入、オンライン検討の増加だ。

 コロナ禍で全カテゴリーのオンライン購入が増加しているが、中でも、初めてオンラインで購入した商品かつ購入頻度が増えた商品を調べると、生鮮食品や日用品など、今までスーパーで購入されてきたものが上位に挙がった。

 「コロナ禍が落ち着いてきて、以前のようにスーパーに行けるようになってからが注目ポイントです」と高木氏は語り、コロナ終息後もオンラインで購入したいかどうかをカテゴリー別に提示する。

オンラインでの購入継続意向(コロナ禍で初めてオンラインで購入した商品+購入頻度が増えたカテゴリー別)
オンラインでの購入継続意向(コロナ禍で初めてオンラインで購入した商品+購入頻度が増えたカテゴリー別)※クリックすると拡大します

 食品やファッションでは70%、日用品も60%以上の人が今後もオンラインで買いたいと回答している。オンライン購入でのメリットを感じ、コロナ禍が落ち着いても便利だから買う人が多いのだ。

 「マーケターは、ポストコロナでもオンライン購入が継続する前提で施策を考えるべきです」(高木氏)

 検討する場所も変化している。実店舗で購入する前にECで検討(WEBROOMING)する人も増加した。ニールセンのデータでは耐久財・消費財でも3割から4割の人がWEBROOMINGすることがわかっている。オンライン上での検討率が上昇すれば、当然、オンラインでのアプローチが重要になる。

 ここで注意したいのが、属性によって検討するサイトが異なることだ。18~34歳と35歳以上の年代別に「商品を検討する際に利用するサービス」を調査すると、上位3つはAmazon、Google検索、楽天市場と共通している。しかし若年層では4位にYouTube、5位にTwitterが入り、35歳以上ではYahoo!検索、Yahoo!ショッピングが入っている。

 「自社のカテゴリーやターゲット年代が検討する場所はどこなのかを押さえた上で、コミュニケーションに活用することが重要です」(高木氏)

 続いて高木氏は、化粧品と日用品において「実店舗とオンラインにおいて3カ月以内に購入した商品が『初めて購入するブランド』であった割合」を提示する。

 全年代でも18~34歳でも、実店舗よりオンライン購入時のほうが新しいブランドを買う人が多いという結果が出た。これには棚が影響していると高木氏は分析する。

 実店舗の棚は有限なので、有名ブランドの商品が多く並ぶ。一方、オンライン上では棚数の制限がないため、消費者は様々なブランドに触れられ、そこから初めての商品を購入するケースも多いのだ。つまり、ブランドが確立している商品であっても、これまで通りのシェアをオンライン上で維持できるわけではない。

 「オンライン上で選ばれ続けるためには検討段階でのアプローチもしっかり考慮することがポイントです」(高木氏)

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ポストコロナのコミュニケーション課題

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/26 08:30 https://markezine.jp/article/detail/38735

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