興味があるブランドを嫌いになることもある
続いて、2つ目の課題であるオンライン購入を増やすための施策についてだ。
「リターゲティングやリマーケティングについて『サイトまでわざわざ来て、興味持っている人なので、何回か広告を当てても問題ないだろう』と考えていませんか? 最終的に何件コンバージョンできたのか、何人をサイトに誘導できたのかだけを重視していませんか?」と高木氏は問いかける。
「自分が興味のある商品でも、何回も広告が表示されると嫌いになることがあるか」という質問に対して、「よくあてはまる」「まああてはまる」と答えた人が50%を占める結果も出ている。
ここで注意すべき重要なポイントは、「自分が興味のある商品でも」というところだ。
「“広告で嫌いになってしまった人がいるかもしれない”という目を持ち、今後のオンライン誘導でもコミュニケーションのあり方を改めて見直すことをおすすめします」(高木氏)
ブランドエクイティをキープするマーケティングを
さらに高木氏はコンバージョン目的のマーケティングに偏重している状況に対しても、警鐘を鳴らす。
コンバージョンに重きを置く背景には、コロナの影響による予算削減や利益確保、CMO任期や業績報告のサイクルの短期化がある。しかし今後、長期的かつ継続的な成長を考える時には、コンバージョン目的とブランディング目的の両方をバランスよくとるマーケティング戦略が必要だ。
なぜブランディング目的のコミュニケーションが必要なのか。高木氏は3つの理由を挙げる。
1つは、ブランドエクイティの喪失は長期的な損益につながる点だ。ブランディング広告を停止するとブランドエクイティ(=ブランドが持つ資産価値)が減少し、中長期的な収益は広告を中止すると四半期ごとに2%減少するという。さらに、失われたブランドエクイティを回復するには、平均で3~5年かかる。
2つ目は、ブランドエクイティの構築は売上向上や施策効率化につながる点だ。認知や検討などのブランド指標が1ポイント上昇すると、短期的な売上が消費財で平均1%、耐久財で0.5%上昇することがわかっている。ブランディングとROIは密接に関わっているのだ。
3つ目に、ブランドエクイティを構築するソースがコロナ禍で失われている点が挙げられる。店頭で商品を目にしたり、街中でロゴを見かけたりといったオフラインでの何気ないブランド体験が、コロナ禍で機会ごと失われつつある。さらにオンラインでは前述の通り多様なブランドが露出しており、消費者は新しいブランドへのスイッチが容易だ。顧客が自社ブランド製品を今まで通り継続して購入する意識を根付かせるためにも、ブランディング目的のコミュニケーションが欠かせない。
以上のポストコロナでコミュニケーションをとる上での注意点をまとめると、次のようになる。
あなたの会社、ブランドではこれらのことができているだろうか? 改めて自社のコミュニケーションを考えてみるのも良いかもしれない。