トヨタUSが発表したDEI活動の縮小
Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)の頭文字をとった略称「DE&I(以下、DEI)」は、日本でも馴染みのある概念だ。そのDEI概念が静かになり、定番概念と思われている昨今の潮流に方向転換が起きつつある。
DEIの概念は企業の発信メッセージに必須!とばかりに、「コピペ」や「とりあえず入れておこう」といった安易な姿勢になっていないか。本稿は自社の立ち位置を振り返る参考材料だ。
トヨタ自動車USは2024年10月、LGBTQ支援イベントへの協賛を中止することを発表した。報道によると、同社はDEIに関する政治的な議論を理由に、DEIプログラムの焦点を絞り直し、LGBTQイベントへの協賛を中止。加えて、5万人の米国従業員と1,500のディーラーに向けて、「STEM教育と労働力の準備に沿うよう、コミュニティ活動を“狭めていく”」と方向転換を発表した。
これは、日本発のグローバル企業であるトヨタが米国で発信したシグナルだ。日本語での報道では、「反DEI活動家の批判を受けて」という受け身(被害者側)の表現が目立つが、こうした動きは「資金や経済(そして政治)」の背後理由があるからこその決断・発表だ。読者には、経営者目線でのアンテナを上げるヒントとしよう。