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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

共感できるパーパスがあるから企業は1つになる──パナソニックコネクトのパーパスブランディングとは

CMでパーパスを映像化することの意義

──パーパスCMを放映する狙いについてもお聞かせください。

佐々木:パナソニックコネクトはしっかりした顧客を持つBtoB企業なので、わざわざCMを制作しなくても伝わることはたくさんあります。しかしこのパーパスは、直接の顧客企業だけでなく、その先にいる一般のお客様、そして社員の方にもしっかり理解していただくことが大切です。そこで企業の存在意義を伝える映像があるほうが良いということになり、ダンスを使った「かなえよう。」篇動画を制作しました。

 この映像ではパーパスの言葉をそのまま使わず、“かなえよう。”という言葉を入口にすることで、社員の方、顧客企業の方、一般のお客様すべてがこのパーパスにどう関わってくるかを描いています。パーパスと向き合い、そこで自分ができることを「かなえる」と言っているんですね。なぜかと言えば「パーパスはわかった。で、どこで関与すればいいの?」という疑問に対し、映像ではもう一段上げて翻訳する必要があるからです。現場のつながりや人とソフトウェアのつながり、お店とお客様とのつながり、工場や倉庫とのつながりで、今はできないこともできるようになり、あきらめていたことがかなうようになる。それを表現し、かつそれがエンターテインメントとして、マジカルに感じてもらいやすいということでダンスミュージックビデオのように制作しました。

山口:パーパスを表現する軸はいろいろあったのですが、あえて当社の成長領域であるサプライチェーン分野にフォーカスすることにしました。そこで私たちのWhyを描くには、サプライチェーンの現場や店舗の現場にテクノロジーが入り、ロボットと人間が一緒に楽しく働き、イノベーションを起こしながら笑って踊り、皆がハッピーになるというストーリーがポイントになります。現場をつなぐことでその先のお客様がハッピーになり、未来を担う子どもたちが笑顔になる。まさに私たちのパーパスを描いたものとなりました。

イナモト:あの映像制作に当たってはダイバーシティコンサルタントの方に相談し、誰かを傷付けることがないように配慮しました。まず映像にほとんど言葉が出てきません。最後にちょっと説明文があるのですが、言葉がなくても感覚的に理解できるものにしようと考えたのです。

山口:キャスティングも、人種の偏りなく、LGBTQ+をカミングアウトしている方、ハンディキャップがある方に出演してもらうなどダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの観点でも配慮しましたね。その上で専門家にチェックもしてもらいました。そこまでやるケースはなかなかないかもしれません。結果として、SNSのコメントもポジティブなものが多いですし、視聴した方の多くが「ワクワクした」とおっしゃってくれていますし、新会社がスタートするに当たってとても素晴らしいコンテンツになったと思っています。

“腹落ちできるパーパス”である重要性

──パーパスを策定、社内に浸透させていく過程で苦戦した点はありましたか?

山口:私たちのケースで言えば、言葉にする過程は本当に難しく苦労しました。ただ、元々本質的にやっていたことを洗い出していったので、腹落ちというか、直感的に心で理解しやすいものを作ることができました。パーパスの言葉だけ作っても、それを会社の柱として事業や社員に落とし込んでいくには、本質的に企業が持っているカルチャーや思想にかなっていることが必要ですし、トップ層のリーダーシップも必要です。まずWhyとしてのパーパスがあり、それを実現するためのコアバリューがあり、それが事業や社員に浸透していく。浮ついたキレイな言葉だけでは浸透しないと思います。

佐々木:額縁にお題目が飾られている状態ですね。そうなると、やっぱり広告もふわっとしたイメージだけになってしまいます。

イナモト:山口さんのリーダーシップやチームの力も素晴らしかったからこそ、良い方向に進んだと思います。またコロナ禍でリモート会議が浸透していたことで、ニューヨークにいる私と日本国内のチームとの間でもスピーディーに意思疎通が進みましたし、お子さんがいる方や妊娠している方、本当に様々な社員の方も参加して議論をすることができました。それも良い方向に作用した気がします。

山口:一方で、納期が厳しい中、またこれまでにないチャレンジをしたいということで、私は皆さんに大変な仕事をして頂いているという意識がありました。でもそんななかでも関係者全員の笑顔が絶えなかったですね。すごくパナソニックコネクトらしいな、と思いました。

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パーパスをきれいごとで終わらせないために

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/06/24 07:30 https://markezine.jp/article/detail/39214

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