「UGCを生み出せるか」がTikTok売れの必要条件
──最近では「TikTok売れ」というキーワードが挙がっています。天野さんは、「TikTok売れ」をどのように分析していますか。
天野:そもそも「TikTok売れ」とは何か? どう定義できるか? を今まさに考えているところです。TikTok内で誰かが取り上げ、1個でも商品が売れればTikTok売れなのか? それとも、地球グミや筒井康隆さんの小説などのように、世の中ごとになったものを意味するのか。個人としては、TikTokで火がついて、他のプラットフォームへ情報が飛び火したり、世の中ごとになったりする広がりを得たとき、TikTok売れという現象になると考えています。つまり、真のTikTok売れはTikTokだけでは完結しないという構造になっているのではないでしょうか。
そしてもう1つ、TikTok売れが起きる必要条件に、コメント欄の盛り上がりがあります。TikTokはユーザーのコメントがうまく誘発されやすい仕組みになっています。
とある機会に、大学生たちからTikTokでニュースを見るという話を聞きました。実際、テレビ局のニュース番組もTikTokに公式アカウントを持ち、ストレートニュースを配信しているのですが、それに対して、コメント欄では感想や解説が盛り上がっています。40代50代の人たちが、コメントをチェックするためにWebニュースを見ているような感覚に近いです。ソーシャルグラフが影響しない分、TikTokはコメントがしやすいのかもしれません。
商品の動画に関しても、「美味しいのか」「どこで買えるのか」などのやり取りがコメント欄で生まれると、自分ごと化しやすくなります。そのとき、もともとその商品を好きな人が「すごくいいんですよ」「こんな使い方ができますよ」とアンバサダー的に振る舞ってくれると、ブランドの手が離れたところで、コミュニケーションが成り立ちます。TikTokに限らず、UGCの活用はSNSマーケティングの基本のキ。あえてユーザーに問いかけてコメントを引き出すような、UGCを生み出すコンテンツを作っていくことも重要です。
──終わりに、今後のTikTokの活用についてアドバイスをお願いします。
天野:新しいサービスの登場は、これまでにない形でファンと繋がり、面白い打ち手を講ずるきっかけを提供してくれます。TikTokは、まさにそのようなフェーズに差し掛かっています。スマートフォンで情報を得ることが当たり前になり、長いコンテンツが見られづらくなりました。
さらに動画を見ていても、友だちからメッセージ通知が来たり、アプリからプッシュ通知が来たりと、集中し続けるのが難しい環境になっています。つまり、アテンションの獲得競争が起きているのです。ショートムービーは、商品やブランドのことに興味を持ってもらうきっかけになりますし、そこからSNSや、他のコンテンツへ繋げられます。TikTokは、中長期的に見たとき、このアテンション獲得競争に勝つための重要な「一番打者」としての位置を占めていくだろうと考えています。