チャネルを横断する顧客
——なるほど。市場拡大には、販路の拡大も大きな役目を果たしていると思いますが、最近はコンビニでもベースフードのパンを見かける機会が増えてきました。この販路拡大の戦略についても教えてください。
もともと販路を限定する意思はなかったのですが、やはりいきなりコンビニに置いてくれるわけではないので、まずは定期購入から始めました。それで実績を作っていったのですが、やっぱりコンビニも「いい商品を売りたい」という気持ちがあると思うんです。実際、定期購入者が増えてきたのも私たちがいい商品を作り続けてきたからですし、いい商品だからこそ売り場に置いてくれているんだと思います。特に時期を定めて「コンビニに置いてもらえるように頑張ろう」としたのではなく、いい商品を追求してきた結果です。
——売上のベースで言うと、メインはやはり定期購入でしょうか。
そうですね。定期購入は5年前から展開しているので、積み上げが大きいんです。ただおもしろいのは実はコンビニと定期購入の間で相互送客があるんですよ。コンビニで商品を見た方が定期購入を始めたり、定期購入の方がデジタル広告を見てコンビニで商品を買うこともあります。実は定期購入の方と、コンビニで購入する方との間には本質的な違いはなく、どちらも普段忙しい都市型の生活をしている方々なんです。商品も同じものですしね。
そのため、定期購入の方々の意見はコンビニで買っている方々の意見だろうと推測できますし、販売予測も立てやすい。そういう特徴があります。
創業から一貫したブランディングと商品戦略
——ブランディングについてはどのように取り組まれてきたのでしょうか。
創業当時からブランディングを見ているフリーランスのクリエイティブディレクターがいて、今は自社の社員としてブランディング全般を担当しています。創業当時は自分一人でR&Dやマーケティングをやってきましたが、ロゴだけはその方に相談してお金をかけて育ててきました。というのも、前職ではアプリのディレクターだったので、クリエイティブは大事だと考えてきたからです。
スタートアップでは、創業当時に作ったロゴやブランド名、社名を変更することがありますが、うちはベースフードという会社名もブランド名も2016年の創業から一貫して同じですし、ロゴも2017年の販売開始当時から変わっていません。そうした意味では、しっかり考えてやってきたと思います。

——商品パッケージやロゴを見ても素敵だなと思います。ちなみに完全栄養食という市場が拡大し、その中で自社がパイを100%取るのはいつごろになると考えていますか?
市場のパイというのは90%くらいになると低減していきますよね。そういった話であれば90%取るのはあと20年くらいかかるのではないでしょうか。もちろん20年と言っても、主食マーケットは100兆円くらいなので、90%で90兆円という規模です。
それは別として、完全栄養食の市場が世界に広がり、人々が食べるようになったら歴史が変わると思います。人類全員が全粒穀物や豆でできた完全栄養食を食べて、健康診断がオールAになれば、健康問題はもちろん、サステナビリティの問題も多くを解決できると思います。そうなれば、人類はまた別の目標を立てて、そちらに動くのではないでしょうか。
——夢のあるお話ですし、そうなったら本当にいいですね。一方で、今、国際危機が起こり、小麦の価格が上がる、供給が滞るなどの事態が発生しています。日本は食糧自給率が低いですし、パンやパスタという主食を価格面、また原材料調達面で安定供給していくためにどのような戦略をお持ちなのでしょうか。
実はそこは我々が重視しているポイントです。私は大学生の時に東日本大震災を経験している世代で、この世代は自分たちが50代、60代になった時の日本に危機感を抱いています。そこでベースフードでは「何が起きても安定供給できます」という商品を提供しているわけです。実際、コロナ禍で物流が停滞した時期がありましたが、そんな時でもベースフードは変わらず製品の安定供給を続け、それがユーザーの安心感、心の健康につながりました。
ベースフードのパンは、普通の小麦粉100%のパンと異なり、全粒穀物や豆、玄米、もち米など、調達しやすい普遍的に作られている原材料を複数組み合わせて使っています。そうした意味で、何か天変地異があっても特定の材料に依存しているわけではないので影響は少ないと思います。安心して、いつまでもおいしく食べていただきたいです。
