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特集:ターゲティングが嫌われる時代のシン・ターゲティング

コンテクスチュアル広告にみるターゲティングのこれから

 ネット広告のターゲティング精度が高まっていく一方、受け手であるユーザーからは「渡したはずのない情報が知られている」「追いかけられているようで気持ちが悪い」という声が挙がるようになった。広告の在り方を再考するにあたり、一つの道筋を示しているのが、ユーザーデータではなくコンテンツの文脈に応じてターゲティングを行うコンテクスチュアル広告だ。その詳細と可能性についてGumGum Japan代表 若栗直和氏にうかがった。

※本記事は、2022年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』80号に掲載したものです。

コンテキストの活用に求められる「発想の転換」

――ポストCookieへの対応が急速に進み、その観点からコンテクスチュアル広告にも注目が集まったことと思います。まずは直近1〜2年のご状況を教えていただけますか。

 ゼロパーティデータや匿名性を担保したユニバーサルIDなど新しい広告手法に注目が集まり、コンテクスチュアル広告への関心も高まっています。当社においても、2020〜2021年のキャンペーン数や広告主案件数の伸び率は40〜50%ほどになりました。2022年も同様のペースで増えており、関心の高さがうかがえます。一方で、一部の大企業を除いた多くの企業は、トライアルとして取り入れているというフェーズです。

GumGum Japan株式会社 代表 若栗 直和(わかぐり・なおかず)氏 広告とブランディングを専門として20年以上にわたり活動。2000~2017年の間、広告会社オグルヴィ(Ogilvy)で東京・香港・上海・シンガポール・台湾などを拠点に活動。アジア・グローバル向けのブランド戦略・クリエイティブ開発・施策立案に従事。2018年よりGumGumの日本代表として国内事業の統括を行い、次世代の広告の開発・普及に取り組んでいる。
GumGum Japan株式会社 代表 若栗 直和(わかぐり・なおかず)氏
広告とブランディングを専門として20年以上にわたり活動。2000~2017年の間、広告会社オグルヴィ(Ogilvy)で東京・香港・上海・シンガポール・台湾などを拠点に活動。アジア・グローバル向けのブランド戦略・クリエイティブ開発・施策立案に従事。2018年よりGumGumの日本代表として国内事業の統括を行い、次世代の広告の開発・普及に取り組んでいる。

 コンテクスチュアル広告の考え方自体は、新しいものではありません。以前から存在していた手法を、最新の技術を使ってより精度高く実現しています。ところがこれまで主流だった「人」単位でのターゲティングとは発想が異なるため、広告主、広告会社ともに、まだ充分に活用イメージを描けていないのが課題です。我々の側でも、きちんとした情報発信をしていきたいと思っています。

――発想の違いについて詳しく教えて下さい。

 コンテクスチュアル広告は、ユーザーの興味・関心を潜在的なところも含めて考え、コンテキスト(文脈)を活かしてターゲティングしていくものなので、プランニングの軸が変わります。

 また、コンテクスチュアル広告の技術だけでは運用が完結しないケースもあります。たとえばアルコールや嗜好品の広告など、一定の年齢や行動で区切る必要があるターゲティングには、別の手法を用いる必要があります。つまり、コンテクスチュアル広告で興味関心をターゲティングしつつ、それと同時にCookieに依存しない形で別のターゲティング手法を取り入れる必要があるのです。だからこそ、目的に合ったプランニングが非常に重要で、活用の際には発想の転換が求められます。

コンテクスチュアル広告の技術と種類

――ここからは、コンテクスチュアル広告の仕組みについてより深くお話をうかがいます。まず、コンテキストに注目するという発想そのものは、デジタル広告に限らずマーケティング全般において重要なものですよね。

 おっしゃる通り、マーケティング戦略においてコンテキストの活用は非常に重要です。たとえばテレビで恋愛ドラマの合間にチョコレートのCMを出稿するのもコンテキスト活用の一つですし、映画におけるプロダクトプレースメントもそれにあたります。屋外広告を掲出するときも、そのエリアを訪れる消費者はどのような背景や心情を持っていて、どういったメッセージを出すと共感してもらえるかを考えますよね。つまり、ブランドと消費者の接点を適切な形で作りあげることが重要です。それにより、企業はブランドの価値を正しく伝えることができ、消費者も前向きにメッセージを受け取ることができます。

――ネット広告においてこの発想を体現していくために、GumGumさんのようなサービスがあるのですね。

 はい。ネット広告においてコンテキストを解析し反映していくには、人の作業スピードでは到底追いつきません。そこでAIを使い自動で解析して広告を掲出する技術を提供する、当社のような企業が出てくるようになりました。Cookieレスの流れを受けて、多くの企業がコンテクスチュアル広告に参入していますが、サービスごとに使用している技術は違います。サービス選定の際には、解析内容が本当に信頼できるのかが一番のポイントになってきます。

 ――多くのサービスが提供される中、自社に合うものをどのように選んでいけばよいのでしょうか?

 最近ではAIを実装したものだけをコンテクスチュアル広告と呼ぶ傾向もありますが、少し広めに捉えると、4つのタイプに分けることができます。具体的には(1)サイトコンテンツ指定型、(2)キーワード指定型、(3)文章解析型、(4)文章・画像解析型で、それぞれの詳しい特徴は図表1にまとめた通りです。タイプごとに複数の事業者がサービスを提供しており、当社のサービスは(4)の領域にあたります。

 それぞれにメリット・デメリットがあるため、利用目的に応じて選定することをおすすめしています。(1)から(4)にかけて解析精度は高まりますが、その分コストも上がっていきます。具体的に言うと、当社は(4)の領域で最高の技術で最高の広告効果を提供することを目指しており、文章に加えて画像や動画もAIによって解析し、マッチングの精度をさらに高いものにしています。その分、(1)〜(3)のサービスに比べると価格はプレミアムになります。(3)の言語解析のみを活用する場合ですと、コストの面ではある程度落ち着きますが、ターゲティング精度や最終的なブランドリフト効果は薄まってしまうでしょう。さらに、一番ベーシックなところは、キーワードとのマッチングを見るという非常にシンプルな技術なので、かなり安価で利用できます。ただ精度は期待できないため、ブランディングの効果は見込めないでしょう。

 タイプの中で具体的にサービスを絞っていく際、一つの指針となるのが、第三者機関からの認証というお墨付きです。日本では、ブランドセーフティやアドフラウドについてデジタル広告の品質を第三者認証する機構「JICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)」が、グローバルでは米国の認証機関、Trustworthy Accountability Group(TAG)が定める認定プログラムとして「Brand Safety Certified(ブランドセーフティ認証)」や「Certified Against Fraud(アドフラウド対策認証)」などがあります。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/25 09:30 https://markezine.jp/article/detail/39724

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