トリプルメディアをバランス良く活用
──ブランド・社会・生活者の接点が見えてきたら、どのようにしてキャンペーンの内容に落とし込んでいくのでしょうか。
まず、ペイド・アーンド・オウンドメディアをバランス良く活用したメディアプランの設計が大事です。どれだけ良いコンテンツを作っても、どのメディアで届けるかを綿密に練らなければ広がりません。
たとえば、序盤はペイドメディアに投資をして話題に火を付ける。続いて、メディアやインフルエンサーに対するPRを行って、キャンペーンで伝えたいメッセージを理解してもらう。そして、オウンドメディアでキャンペーン情報を網羅する受け皿を作る。このように3つを上手く連動させてメディアプランを立てることが重要です。
また、これを実現するにはチーム体制も重要になってきます。総合広告代理店にすべて丸投げして解決できるケースは少なく、クリエイティブ、PR、メディアそれぞれに長けたエージェンシーとワンチームで取り組む必要があります。このチームをオーケストレーションしていくのが、ブランドマネージャーやマーケティングディレクターの役割だと考えています。
「どう活かせるか」の視点で国内外の事例を見渡す
──ブランドの周辺で起きている社会課題をキャッチアップするために、普段どのようにして情報収集をしていますか。
大きく2つあって、1つはニュースなどから社会で起きていることをキャッチアップし続けることですね。至極当然な話ではありますが、常にテレビやニュースサイトで情報を追い続けるのはもちろん、街に出る、お店に入るなどして生活者の方を観察するようにしています。
もう1つは、国内・海外で上手くいっているキャンペーンに関する情報を集めています。カンヌ・ライオンズの受賞作品などを見ると、ここ数年はパーパスドリブンやソーシャルグッドな作品がいくつか受賞していて、社会課題を起点にキャンペーンを企画する際の参考になると思います。
──大倉さんは企業の事例を見るとき、どのような視点で見ているのでしょうか。
自分の今携わっているブランドや仕事でどのように活かせるか、という視点で見ています。若いころは、広告を見て自分のビジネスに応用できる点をメモに取っていました。書籍も同じような視点を持って読むことで、すぐに仕事で活かすことができています。
今トライしないと置いていかれる
──今後社会課題を起点にしたキャンペーンはどうなっていくと思いますか。
現状は、デジタルマーケティングという言葉が登場したときと近いと感じています。つまり、「これってどうなの?」「今後メジャーになっていくの?」と思っている方が多い印象です。
デジタルマーケティングはメジャーな存在となり、今ではマーケターにとって必須なものになりました。これと同じ状況が、社会課題を起点にしたキャンペーンでも起きると思っています。今やっておかないと、5年から10年経過したときに、取り残されていく可能性があります。
今はSDGsなどのキーワードが登場し、社会を見据えたブランドのアクションに対する重要性が高まっていますが、「売上につながるのか」「本当に意味があるのか」と疑念を持っている方もきっと多いはず。しかし、そこで距離を置いて様子を見るのではなく、スモールスタートでもいいので試してみることが必要だと思います。そうすることで、これまでとは違うターゲティングのあり方が見えてくるかもしれません。