SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

【特集】2023年、マーケターたちの挑戦 ──未来を拓く人・企業・キーワード

「にしたん」の4文字の認知度・ブランドをもって次の10年へ。西村社長が仕掛ける2023年の戦略

「にしたん」を世の中に刷り込ませたテレビCM

――郷ひろみさんや3時のヒロインをキャスティングしたテレビCMの展開をはじめ、2022年も積極的にプロモーションを行われていました。先にうかがったこれらの狙いを踏まえ、その手応えや収穫はどうでしたか?

西村:2022年の年末、NHKの紅白歌合戦に郷ひろみさんが出演されました。郷さんの歌唱中、その後ろで3時のヒロインも出られていたのですが、3時のヒロインがテレビに映った瞬間、Twitterが「にしたん」のワードで一気に盛り上がったんです。ちなみに、3時のヒロインは、紅白歌合戦でもにしたんクリニックのテレビCMで使用した衣装を着られていました。これが意味するのは、郷ひろみさん×3時のヒロインの組み合わせ=にしたんという方程式が、かなり多くの国民に刷り込まれているということ。放映されているテレビCMは数えきれないほどありますが、出演タレント=協賛企業という刷り込みが、これだけ強力にできているものはなかなかないように思います。

にしたんクリニックテレビCM「タンバリンダンス」篇

――それは、テレビCMの投下量などプロモーションの予算に比例するものでもない?

西村:はい。私は、テレビCMはキャスティングが9割だと思っています。CMとキャスティングがマッチしていないと、同じボリュームでテレビCMを投下しても、まったく印象に残らない。実際、2022年に3時のヒロインではなく、当社がプラチナスポンサーを務めるベルギーサッカー1部リーグ所属のシント=トロイデンVVの選手たちを起用したテレビCMを展開したのですが、ブランドイメージのリフトは奮わない結果となりました。CMの投下量は、3時のヒロインを起用した時と変わらなかったのに、です。やはりテレビCMはキャスティングが重要で、ここに意外性がないとダメだなと再認識しましたね。

次に掲げるは、不妊治療事業の成長・拡大

――「にしたん」の知名度や信頼性をベースに、次のビジネスを創造していくとのことですが、現在次の注力領域とされているのはどの事業でしょうか?

西村:「にしたん」の冠を掲げる事業の中で今一番力を入れているのは不妊治療を提供するにしたんARTクリニックの事業です。ARTは高度不妊治療を意味する専門用語で、2022年に開業した新宿院から事業をスタートさせました。

 ただ、不妊治療の事業に関しては、大きくマス広告を展開する計画はありません。とてもセンシティブな領域で、これに関する広告を見るだけで気分を害されるような方々もいらっしゃる。ですから、これまでも不妊治療の事業を前面に出す形での広告活動は行ってきませんでした。だからこそ、「にしたん」という冠を世の中に刷り込ませることで、間接的に認知度と信頼性を築くということを2022年に徹底的に行っていたとも言えます。不妊治療の領域で圧倒的日本一になるために、先行投資をしてきたわけです。

――そもそも、不妊治療の事業を始められたのにはどういった経緯があるのでしょうか?

西村:私には今年7歳になる娘がいるのですが、この子は僕も妻も40を越えた時にアメリカで不妊治療を受けて授かった子供です。私がアメリカで受けたのは着床前診断というもので、これは体外受精をさせてできた受精卵の遺伝子検査を行い、その受精卵に染色体異常がないかどうかを検査するという治療でした。受精卵の染色体に異常があると、多くの場合着床しないもしくは流産してしまう、障害をもって生まれてきてしまうなどの症状が出てきてしまいますから、不妊治療においては正常な受精卵を着床させることが一番の肝になります。この検査を受けられたからこそ、私は1回の治療で娘を授かることができました。

 ところが、この着床前診断という不妊治療は、現状、日本だと受けたい人が誰でも受けられるような治療ではありません。現に私の3つ下の弟もずっと日本で不妊治療を受けていましたが、なかなか子供に恵まれず、アメリカに渡って不妊治療をしようにも日本での仕事や生活があるために難しいという状況にありました。自分や弟の原体験もあり、自分が日本に帰国したら、日本でもこうした高度な不妊治療を誰もが受けられるものにしたいという強い思いがあり、2021年に帰国してからすぐ動き出したという経緯があります。

 流産になる原因の6~7割が染色体異常によるものだという科学的なエビデンスが既に発表されていますが、日本産科婦人科学会のガイドラインを遵守し、政府の後押しも得ながら、我々が日本で着床前診断の治療を提供することで、多くの方の心と身体が傷つくことを防ぐことができる。何年も不妊治療を繰り返す中で心が折れてしまったり、仕事が続けられなくなってしまったり、離婚してしまったりという色々な問題をゼロにはできないかもしれないけれど、少なくすることができるわけです。これはとても社会的に意味のある事業ですし、「あらゆる事業領域を越えて社会の問題を解決する」という弊社の企業理念にも通ずるものだと思っています。

――医療業界は規制も多く、調整のハードルも高そうです。どのように事業を拡大させていくのでしょうか?

西村:PCR検査事業を拡大させた時と同様に、法人へのサービス提供を起点に戦略を考えています。不妊治療を受けている方々は、今自分がかかっている先生の判断が正しいのかどうか、セカンドオピニオンを受けるべきなのかどうか、迷われている方も多くいらっしゃいます。そういった方の不安を払拭するために、企業の福利厚生サービスとして、にしたんARTクリニックの無料ホットラインを用意し、電話やメールで相談を受けられる場を提供していきます。大手企業を中心にこのサービスを福利厚生で導入いただき、にしたんARTクリニックの認知度や信頼度、ブランドを高めていくという戦略です。

次のページ
重要なのは、一にも二にも「認知度」である

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
【特集】2023年、マーケターたちの挑戦 ──未来を拓く人・企業・キーワード連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/02/09 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41053

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング