デジタル活用を進める熊本県観光戦略部
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは皆様の自己紹介をお願いします。
冨永(熊本県庁):私は熊本県観光戦略部 観光企画課 観光創生班で班長を務めています。デジタルマーケティングや観光DXなど、新しいことへの挑戦が課のミッションの一つです。
浦田(熊本県庁):同じく観光創生班で、デジタルマーケティングを担当しています。少し前まで県庁のデジタルマーケティングは、Webサイトや動画の制作などデジタル“プロモーション”の趣が強かったのですが、最近はデジタルを活用してもう一歩踏み込んだ取り組みを推進しているところです。
白石(三井住友カード):私が率いるデータ戦略部は、カード会社として消費者と事業者の皆様からお預かりしている大切なデータを活用することにより、両方のお客様に新しい価値を提供するチャレンジから生まれました。
データ分析サービス「Custella」の提供を開始したのは、コロナ禍に入る前です。キャッシュレスデータなら「どこからどこへ」「何時から何時まで」という粒度で幅広い範囲の消費実態を捉えられるため、「日本人や訪日外国人の観光促進に取り組む各自治体のお役に立てるのではないか」という仮説からスタートしました。
荒木(三井住友カード):私はデータ戦略部のデータビジネスプランナーとして、自治体や民間企業、教育機関などに対して、キャッシュレスデータを用いたマーケティング支援を行っています。
近藤(アド・セイル):香川県を拠点とする広告代理店のアド・セイルで、Web広告事業に携わっています。様々な地方自治体や企業様が抱えている課題を、デジタルマーケティングの力を使って解決するお手伝いをしています。
鵜川(アド・セイル):私は広告運用担当として、クライアント向けに営業から広告配信後のレポーティングまで行っています。
温泉のPRで消費単価の底上げを狙う
MZ:観光業の再始動が全国的に進められています。熊本県庁の観光戦略を教えてください。
冨永(熊本県庁):「ようこそくまもと観光立県推進計画」に定める四つの戦略に基づき、各事業を進めています。すべての戦略に通ずるキーワードは「新たな観光スタイル」です。
浦田(熊本県):熊本県には阿蘇山や馬刺し、熊本城、くまモンなど、様々な観光資源があります。新たな観光スタイルの確立を目指すにあたり、私たちは温泉に注目しました。温泉は宿泊をともなうケースが多いため、高単価の消費を狙えるからです。
最近は政府が推進するEBPM(※)の流れを受け、データドリブンかつ検証可能なプロモーションの実施が求められています。温泉を訴求するプロモーションを実施するにあたり、データ活用や効果検証のノウハウを持つ民間企業の力を借りるべく公募を行いました。
※Evidence Based Policy Makingの略称。証拠に基づく政策立案のことを指す
MZ:三井住友カードは熊本県庁の公募にエントリーしたそうですね。応募時に提案した内容を教えてください。
荒木(三井住友カード):事前に観光消費額を分析し、そのファクトデータを基にした広告・送客配信を提案しました。分析は我々の専門領域ですが、広告配信は専門外のため、以前からお付き合いがあったアド・セイル様に声をかけてご一緒することにしました。