SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

再発掘される「店舗」の価値 次世代ビジネスモデルを追う

“モノを買わない”時代に「WANT」を引き出す 松永エリック氏と考えるリアル店舗の新たな価値


 コロナ禍によって大きなダメージを受けた店舗ビジネス。人々の価値観が大きく変わった中、店舗の役割をどのように再定義し、価値を見出していくべきだろうか。本連載では、SNSチャネルを活用したコミュニケーションプラットフォームで、店舗ビジネスを支援しているMicoworksの大里氏をホストに、経営の有識者や新たな店舗ビジネスで注目される企業にインタビューし、これからの店舗ビジネスの在り方について紐解いていく。第1回はビジネスコンサルタントとして多くの事業変革に携わってきた青山学院大学 地球社会共生学部 教授 学部長の松永エリック・匡史氏に話を聞いた。

もうコロナ前には戻らない。若者の「何も買わない消費行動」

大里:コロナ禍を経て、主体的にDXやデータ活用がされ、店舗ビジネスが大きく変化しました。人々は新たな生活様式を受け入れており、コロナ前とまったく同じ状況には戻れないと考えています。エリックさんは、ニューノーマルと言われる時代において、生活者の変化をどのように考えていらっしゃいますか?

Micoworks株式会社 ビジネスマーケティング部 Director 大里 紀雄氏
Micoworks株式会社 ビジネスマーケティング部 Director 大里 紀雄氏

エリック:私は、コロナ禍の影響と消費行動の変容は別物と捉えています。確かにコロナ禍を経験したことで、店舗のEC化を含むDXは本来の想定よりも5~6年くらい短縮されて進みました。

 ただ、コロナ禍が明け、店舗で買い物ができるようになっても、生活者の購買行動は元には戻らないと思っています。そもそも、Z世代やα世代の購買行動は、それ以前の世代と大きく異なるからです。

画像を説明するテキストなくても可
青山学院大学 地球共生社会学部 教授 学部長 松永 エリック・匡史氏

エリック:購買とは本来は、お金を払ってものを買うことですが、現在では無料でサービスを使うことができます。それもあり、特にZ世代はお金を払わずとも満足した生活をおくることができ、それが当たり前になっています。つまり、生活者にとって購買の捉え方そのものが変容していて、自らお金を支払うことの重みが増していると言えます。

1to1マーケティングで消費者の信頼を得る

大里:この流れは、店舗ビジネスにも影響を与えるのでしょうか?

エリック:そうですね、大きな影響を与えていくでしょう。最近ではラグジュアリーブランドでもサブスクを展開するようになり、ブランド品も、数千円で手に届くようになりました。サブスクが浸透していくと「買う」選択肢を必ずしも取られなくなります。リアル店舗かECかという話にとどまらず、モノを買わない生活者といかに接点を築き、購買行動へ導くのかが今後、深く考えていくべきテーマだと思っています。

 私は、「NEED」と「WANT」の違いが重要だと思っています。実際、「欲しいけどいらないモノ」は多くあります。たとえば、生活を軸に考えると、エンターテインメントは本来不要なものです。私の考える「WANT」の定義とは、抑えられない購買行動、購買衝動のこと。要は、買いたい気持ちが抑えられないからモノを買う行動のことを指します。車やiPhoneといった商品は、別に買う必要がないのに新製品が発売されるとチェックしてしまうし、見ると欲しくなる人も多いのではないでしょうか。

 今の若い世代は、モノが周りに溢れているからこそ、逆に買いたい・欲しいという欲求が弱くなっています。だからこそ、どうすれば自分たちのサービスにお金を使ってもらえるか、どのように顧客を育てていくかを考えなければいけません。スマホがあればなんでも情報は手に入る上に、無料コンテンツも豊富なのでお金を払う必要性もありません。

 時代に対応し、生活や触れるコンテンツの中に商品、サービスを組み込んで購買行動へと導くビジネスの考え方は、従来の販促手法とは当然大きく異なります。

大里:では、企業は何をどのように切り替えていくべきでしょうか。

エリック:今までのような販促では上手くいかなくなる可能性が大きいため、ユーザーといかにダイレクトラインを持つかが重要になってくると考えています。

 テレビのCMは、昔であれば視聴者数が多い時間帯の広告枠を買ってCMを流せば一定の効果を得られましたが、若い世代はほとんどテレビを見ません。また、YouTubeも、コンテンツの質、モラルを考慮すると本当にそれが適切なのかわかりません。

 このような観点から、消費者へ与える安心感・信頼・つながりを考えると、1to1のマーケティングが想像以上に必要な時代になっていくでしょう。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
企業はストーリーを提供して、顧客を醸成する

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
再発掘される「店舗」の価値 次世代ビジネスモデルを追う連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

大里 紀雄(オオサト ノリオ)

Micoworks株式会社 ビジネスマーケティング部 Director 

大手Web制作会社にてチーフデータアナリストとして、DMPの構築および活用支援、広告運用の業務に従事。マルケトではシニアビジネスコンサルタントとして業種業界を問わず、大手企業から中小企業まで、MAツールの導入や戦略構築支援を行う...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/05/12 11:17 https://markezine.jp/article/detail/41978

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング