ECとオリジナル商品で、マーケティングの変革を目指す
ECは、それまで店舗と同じものが買える場所として用意していたが、伊東屋ブランドの世界を提供する構成に変更。トップページのイメージを大きく変えた。「それまでは高機能なチラシという感じ。変更後はブランドブックです」と松井氏はその変化を説明する。顧客接点としてはSNSを多用、Instagramを中心に自社チャネルのブランドイメージを統一して展開し、商品の魅力を伝えるアピールには広告出稿を積極的に行った。
オリジナル商品は「シンプルなグッドデザインと遊び心」を大切にして開発を進めたという。商品展開では、伊東屋にとって非常に象徴的であるペンのジャンル、その中でも絶対当たるものからと人気ブランド「ロメオ」とのオリジナルコラボ商品を皮切りに開始した。
「ペンは細くて小さいため、実はアピールが難しい。どう見せるかで勝負しました」(松井氏)
その結果、オリジナル商品展開は好調にスタート。それ以降も、ビジネスパーソンのグッズでありながら遊び心ある色合いが特徴的なCOLOR CHART、ペンメーカーLAMY社の代表的ブランド「safari」とのコラボ商品などを開発し、それぞれ人気を博している。さらに「システム手帳サロン」といった販促イベントも展開し、Webでのアピールを進めていった。
こうした開発は一筋縄にいくわけではない。売場のスタッフからすると、オリジナル商品は話題を自分たちから作らなければいけないために扱いにくい面もあるのだという。そこで重要なのは社内コミュニケーションだ。
「皆が一体感を持って、情報や苦労を共有することが大切です。弊社内には『意図を伝えて輪が広がる』という思いを込めて作られた『いとでんわ』という社内メディアがあり、商品開発への様々な想いや意図を徹底して伝えました。また売場からのフィードバックも、毎週皆で集めて共有しました。フィードバックから商品開発につながったこともあります」(松井氏)
体験を軸に店舗とデジタルチャネルの役割を再定義
これにより顧客とのコミュニケーション、体験の導線はどう変化したのか。従来は店舗で集客し、ECサイトの会員になってもらう流れだったが、今ではSNSで伊東屋の印象や価値を知り、ECサイトや実店舗にも来てもらうという流れに。利用後はメールマーケティングでリピートしてもらうというサイクルも構築した。デジタルチャネルは伊東屋ブランドの価値を訴求する場、店舗は伊東屋ブランドを徹底的に体験できる場と位置づけられた。
ebisumartの開発・企画に携わるインターファクトリーの兼井聡氏がECサイトベンダーに求めることについて尋ねると松井氏は「デジタル上で買う場所を提供すること」だとし、テレビ以上に身近になったスマートフォンでのSNSなどの利用と購買行動の関係について言及した。
SNSではターゲティングが明確にできるメリットがあり、現在のECサイトの構築においてはSNSとのシームレスな連携が鍵となる。連携できれば購入データとその導線となったコンテンツの分析が可能だ。伊東屋ではデータに基づいたコンテンツのチューニングを実践している。
セッション終盤、松井氏は「改めて伊東屋とは何か」という質問に答えた。
「伊東屋はエンターテインメントです。どれだけおもしろいコンテンツで人を喜ばせることできるかを考えて、日々商売をさせていただいております。店舗は、舞台やコンサートのように、伊東屋に来店したお客様が、楽しく感動したり何かを発見したり心をゆさぶられてリフレッシュした気分になれる、そんな場所でありたいです」(松井氏)
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