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2023年のアプリ広告を振り返り!調査データからひも解く、今後のアプリマーケティング戦略

 スマートフォンが普及し、誰もがアプリに触れられるようになった昨今、アプリ開発へと乗り出す企業は少なくない。こうした中、企業はどのようにアプリマーケティングを進めていけばいいのだろうか。今回はユニティ・テクノロジーズの峯氏に、アプリマーケティングの概況とモバイルアプリ広告のトレンドを取材。今後の戦略を練るうえで押さえておくべきポイントも伺った。

UnityとironSourceが合併

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、2023年のモバイルアプリ広告の概況について伺います。まず自己紹介をお願いできますか。

峯:ユニティ・テクノロジーズ(以下、Unity)は、ゲームを作るときに使われるツールの提供を事業の中心に展開しています。ゲーム開発という特にゲームエンジン領域は、2022年の調査ではモバイルゲームトップ1,000のうち70%以上がUnityを使って作られているなど、ゲームエンジンとして世界最大のシェアを占めています。

 私自身は元々、2016年にイスラエルのironSourceへジョインし、日本オフィスの1人目の社員として日本における事業の立ち上げから携わっていました。2022年にUnityと合併したため、同社でデベロッパー様のグロースをサポートする広告部門に所属しています。

MZ:合併の背景を教えてください。

峯:当社は開発支援から成功支援の流れを作るため、広告出稿によるユーザー獲得やマネタイズのサービスにも力を入れています。ironSourceとの合併はこの流れの中で実現したものです。

 ironSourceのプラットフォームは、アプリマーケティング分野におけるワンストップショップを提供しています。事業会社の本来の責務である「より良いサービスの創出」に専念できる環境を創り出せ、収益を開発投資に回すことでクリエイターがどんどんゲームを作っていくサイクルの実現を目指すUnityの思いと通じるものがありました。

 このように同じDNAとビジョンを共有する2社が、より完全なプラットフォームを構築するために一緒になったということです。

アプリ市場、マネタイズ戦略の見直しが求められる

MZ:2023年のアプリ市場はどういった動きだったのでしょうか。

峯:日本のアプリランキングを見てみると、上位のほとんどがグローバルのタイトルとなっています。海外では、多くが課金と広告によるハイブリッド型の収益モデルです。一方、日本ではまだ課金モデル主体のケースが多く見られます。

Unity Technologies Japan<br />Senior Growth Manager, Japan 峯 秀一郎氏
Unity Technologies Japan
Senior Growth Manager, Japan 峯 秀一郎氏

峯:このアプリ内課金が進んでいることについて調査データからひも解いてみましょう。

 data.aiの調査では、消費者向けモバイルゲームの売り上げは減少傾向にあることが示されていました。2021年までは右肩上がりだったのですが、2022年には5%減少、2023年はさらに3%減少して1,070億ドルになる予測です。

 またUnity LevelPlayのデータでは、アプリ内課金をベースとしたジャンル(RPG、カジノ、パズル、シミュレーション、ラッキーリワード)の広告収益は、2020年以来着実に増加しています。当社のGaming Reportでは、DAU(Daily Active Users)はグローバル全体で8%増加したにもかかわらず、課金ユーザーは2%減少しています。

 加えて、ユーザーは月額課金や買い切りよりも、アプリ内課金および広告を好む傾向にあることも調査結果として出ています。広告収益モデル導入によってユーザー体験が阻害される可能性は低いでしょう。

ユーザーは月額課金や買い切りよりも、アプリ内課金および広告を好む傾向にある
ユーザーは月額課金や買い切りよりも、アプリ内課金および広告を好む傾向にある

峯:また直近では、運営による定期的なアップデートや実施内容も増加傾向である中で、ユーザーが1つのゲームを長くプレイする傾向も強くなってきています。コアゲームに関するアップデートのほか、実績解除やチャレンジの活用が多くなってきています。

2023年のモバイルアプリマーケティングを振り返る

MZ:2023年のモバイルアプリ広告はどのような傾向だったと考えますか。

峯:特に潮流として見られるのは2点あります。「無課金ユーザーの獲得戦略」と「グローバル展開前提のアプリ開発」です。

MZ:まず1点目の「無課金ユーザーの獲得戦略」から伺えますか。

峯:これは、収益モデルと連動した話です。課金収益のみのアプリは広告出稿の評価基準をROASとしていることが多いものの、昨今の課金額・課金率低下傾向の状況では、課金ユーザーのみを評価するのでは厳しい状況にあります。

 一方で収益モデルがハイブリッド化しているアプリは、非課金ユーザーであっても長く遊んでくれるユーザーは広告を見ることで収益に貢献してくれます。IAP ROASターゲティングの出稿ではリーチできなかったユーザーも、Ad ROAS出稿で獲得することで、無課金ユーザーもうまく収益化につなげられるのです。

 このことは、収益面だけの問題ではありません。課金しなくても長く遊んでくれるユーザーがいることは、場が盛り上がり、ゲーム運営において非常に大切です。広告出稿でも目先の収益の評価基準だけではなく、長く遊んでくれるユーザーをいかに評価するか、ユーザーベースの厚みをいかに作るかを考慮した獲得戦略の工夫が増えてきています。

 また、アプリ内広告を入れることで継続率が上がるというデータもあります。広告視聴によってユーザーは課金した際と同じ体験をすることで、長くアプリを楽しみやすくなることがわかります。

アプリ内広告を入れることで継続率が上がっている
アプリ内広告を入れることで継続率が上がっている

ビジネスモデルを新たな環境へ適応させることが重要に

MZ:2つ目の「グローバル展開を前提としたアプリ開発」についても教えてください。

峯:これも日本の経済状況と課金収益のみのモデルには厳しめの現況からの潮流だと考えています。私たちがグローバルでのサービスであり、海外企業のアプリ運営と広告出稿についても目の当たりにしやすい環境にいて、ご相談を受けるケースが多いゆえの気づきです。

 相談内容は、「日本のストアランキングでもなぜ海外企業のアプリが上位に多数入ってくるのか」「どういう収益モデルでどんな広告出稿をしているのか」「逆に自分たちが同様のグローバル展開のアプリ運営ができないか」などが増えてきています。

MZ:海外の収益モデルについて、もう少し伺えますか。

峯:一口に課金と言っても、抜きんでた課金額のユーザーが誕生しづらい中、どのように収益を上げるのかといった工夫が企画段階から考慮されます。広告収益も柱の1つとして、新規ユーザー比率が高ければ高いほど、広告収益のeCPM(effective Cost Per Mille)も高くなっていることを踏まえ、継続的な広告出稿でユーザー獲得をしている状況にあります。

 個人的に思うのは、言語の問題もあるのか、日本は変化への対応が難しい印象があります。海外勢は変化ありきで、それを機会ととらえてチャレンジしていることが多いです。しかしゲームは、他のビジネスやコンテンツよりも国境を超えやすいものだと思っています。さらに海外に広がるゲームがアプリでも増えることに我々も貢献できればと思っています。

4つのステップを回し、アプリビジネスを加速

MZ:今後のアプリマーケティング戦略では、どういった点がキーポイントになるでしょうか。

峯:ビジネスモデル自体を新たな環境へ適応させることで、さらなる成長ができると考えます。

 具体的には、収益を増やしていくためにユーザー体験と収益(アプリ内課金+アプリ内広告)を最大化し、そのデータをユーザーレベルで分析、ユーザー獲得コストの最適化へ適用していく方法があります。どのようなジャンルのアプリでも広告収益モデルの導入は可能ですが、潜在的なリスクも考慮する必要があるほか、それを運用していくリソースも必要になります。

 また、課金主体のゲームや非ゲームアプリに広告収益モデルを導入する際には、課金収益やユーザー体験にネガティブなインパクトを与えないマネタイズ戦略を考える必要があります。このような課題を解決するため、私たちは「Unity LevelPlay」というプラットフォームを提供しています。

MZ:「Unity LevelPlay」は、どのようなサービスなのでしょうか。

峯:Unity LevelPlayは、アプリビジネスの成長に必要なユーザー体験および広告体験を向上させるためのツールを備えた包括的なプラットフォームです。最大級の入札ネットワークを利用した収益最大化や、ROAS目標に合わせて広告出稿キャンペーンを自動最適化する機能なども備えています。

 ゲームの事業成長における両輪となる「マネタイズ」と「ユーザー獲得」の循環を私たちはグロースループと呼んでいるのですが、Unity LevelPlayでは「1.ユーザー獲得」「2.収益最大化」「3.マネタイズ施策の分析&最適化」「4.再投資」という4つのステップを完結させることが可能です。

アプリの収益性を上げるための、4つのステップ
アプリの収益性を上げるための、4つのステップ

拡大し続けるアプリ市場で、新しい形の支援を

MZ:Unity LevelPlayの他社と比べた強みを教えてください。

峯:ユーザー体験や広告体験を最大化するだけでなく、実際の導入・運用でも継続的なサポートを提供しています。ツールだけでなく、ベンチマークをもとにマネタイズ戦略の改善のほか、数値として表れない機会損失の可視化も実施しています。

MZ:具体的にどのような企業が「Unity LevelPlay」を導入しているのでしょうか。

峯:グローバルではゲームだけでなく、漫画や金融など幅広いジャンルのアプリで導入されています。

 たとえば、あるRPGゲームに対して広告枠の置き方を提案したところ、50%も収益が伸びました。広告の入れ方などは、ゲーム制作経験のある専門のチームがコンサル的なアプローチで改善提案しています。

 また非ゲームアプリでは、インタースティシャル広告のフリークエンシーの変更を提案した結果、ARPUやLTVが改善。ユーザーニーズに加え、動線も含めて分析したうえで広告位置を検討・追加し、ユーザー体験を阻害せずに広告収益だけを増加させることができました。

MZ:今後の展望や展開を教えてください。

峯:アプリ市場は今後どんどん広がっていくと思います。それに合わせ、ビジネスとして安定的に成長できるハードルは年々上がっています。その中でUnityとironSourceの合併は、ゲームクリエイターの開発支援だけではなく、成功支援を強化するために非常に意義があると自負しております。

 今回紹介したサービス以外にも、当社では動画制作支援ツールやApple Search Adsなど他の広告出稿管理ツールなど成功支援に向けたサービスを展開しています。これらのサービスを拡充しながら、マネタイズおよび新規ユーザー獲得はUnity LevelPlayを軸として、これからも包括的な支援を続けていき、ゲーム・非ゲーム問わず、新たな形アプリビジネスを支援できるプラットフォームを目指します。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ironSource Japan合同会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/10 10:30 https://markezine.jp/article/detail/42052