リテールメディアにセブン-イレブン・ジャパンが本格参入した背景とは
リテールメディア広告市場は、小売企業には新しいビジネスの仕組み、広告主には新しい消費者との接点として注目されている。市場規模は、2022年は135億円となっており、2026年には約6倍の805億円規模に拡大すると予測されている。小売企業が自社で保有する購買データなどのアセットを活用できるのも魅力だ。
同事業に2022年9月から本格参入したのは、全国に国内2万超の店舗を展開するセブン-イレブン・ジャパン。商品戦略本部傘下に専門組織として「リテールメディア推進部」を設置した。
リテールメディア推進部の総括マネジャーを務める杉浦氏は、リテールメディアについて「小売業者が持つPOSやID-POSデータなど、独自のデータを活用できる点が非常に重要なポイント」と説明した。さらに購買意欲が高い状態の顧客に対してリーチでき、リーセンシ―効果(ユーザーが直前に接触した広告が購買に影響する効果)が高い点に加え、小売が小売業以外で、事業のシェアを奪い合うことなく収益を得られる点を特徴に挙げた。
店舗やアプリなど「面」として顧客に販売経路を持つ小売企業がメディアをもち広告を出稿することで、購買に直結しやすくなるのだ。「消費者は買い物中に広告を見ることができ、実際に購入することもできます。広告主の広告が購買までつながり、線としてビジネスが広がることもリテールメディアの特徴です」(杉浦氏)
なぜ今、リテールメディアなのか?
なぜ今、セブン-イレブン・ジャパンは、リテールメディアに参入するのか。杉浦氏は近年の小売業・広告業それぞれの面から要因を挙げた。
まず、小売業の近年の動向として「売上利益を上げ続けることはそう簡単ではありません」と吐露。少子高齢化による生産年齢人口の減少や、原材料価格の高騰など、消費者を取り巻く環境が大きく変化している。
さらに小売業もリアル店舗だけではなく、生活者が様々な形態で商品を買える・サービスを受けられる状態に変化。その分、競合となる対象も大きく広がることになったのだ。こうした背景から、リテールメディアに着目していったという。
色々な選択肢がある中で、なぜリテールメディアなのか。そこには「広告市場の現状が寄与している」と杉浦氏は話した。
電通が毎年発表する「日本の広告費」では、2021年にインターネット広告がマスコミ4媒体9広告を初めて上回った。しかし、商圏をまたいだインターネット広告の流れに「待った」をかけたのが、個人情報を取り巻く問題だ。
「改正個人情報保護法やApple・Googleでの3rdパーティCookie規制などにより、ネット広告の中心にあった3rdパーティを使えなくなる流れが来ています。すると、これまでと同様のターゲティング広告は困難になります。そこで1stパーティデータをより多く持っている存在として各業界から注目されるようになったのが、小売業です」(杉浦氏)
さらに、小売のOMO化もリテールメディア推進の後押しに。「リアル空間+デジタル空間を融合した顧客体験提供が当たり前になった今、リテールメディアの波はさらに大きなものとなっている」と杉浦氏は分析した。