広告の透明性を担保するID活用
有園:協調のメリットについてはどうでしょうか。たとえば、航空会社のWebサイトで海外旅行の航空券を予約したユーザーが、翌日大手雑貨店のWebサイトを訪問したとすると、双方のサイトで同意が取れた上でID連携していれば、「新しいスーツケースを買おうとしているかもしれない」と判断して広告を出すことも可能になります。
田中:サイトの訪問データについては、IDを使って連携できますね。一方、データの色付け部分(属性データなどのターゲティング項目)は、企業によって独自性があるので競争分野になります。
有園:最後に、ユーザー側のメリットについてもお話できればと思います。どのように考えていますか。
田中:デジタル広告全体の信用度に影響を及ぼす、広告の透明性(トランスペアレンシー)の担保にもつながります。ユーザーにまったく関係がない広告やセンシティブな内容の広告が出てきてしまうと、ユーザビリティとしては最悪です。この課題に対しても、IDソリューションを活用したターゲティングが一つの解決の手段となります。
有園:その通りですね。IDで個人のデータを捕捉できないと、不快に思われる広告が表示される可能性も高まります。属性と行動を踏まえて相性の良い広告を出したほうが、ユーザーにとって望ましいと思います。
不気味の谷を乗り越え、健全なネット環境を実現するには
有園:昔から「不気味の谷」という言葉もあり、トラッキングが気持ち悪いという考え方もあります。ですが、ユーザーの役に立つ広告を出すことにはメリットがありますし、明らかに不適切な広告を出さずに済むことにもつながります。そういった技術によって、より良いネット広告の環境を作っていけるはずです。
田中:子どもに不適切な広告を見せないようにすることにもつながります。しかし、そのためにはまず年齢のデータがないと何もできません。IDソリューションが浸透していけば、そういった属性データを提供しても安全だとわかってもらえるようになります。そこはきちんと伝えていかないといけないですね。
有園:属性などのデータは個人情報がわからないように加工されていますからね。仮に第三者が入手しても、個人を特定することはできません。
ペアレンタルコントロールを設定するためには「そのデバイスを子どもが使っている」という情報を登録することが必要ですが、それと同じように、今後は子どものIDを登録することで広告をコントロールできるようになるでしょう。健全なネット環境をつくっていくために、IDソリューションが非常に重要なツールになる可能性があるのです。安心してID登録してもらえる環境をつくるため、業界全体で普及や啓蒙に取り組んでいかないといけないですね。
