漫画・アニメ、化粧品、食品が人気ジャンル
──東南アジア各国における、日本ブランドの優位性を教えてください。
日本企業に対する現地企業からの信頼は非常に厚いです。消費者の間でもメイド・イン・ジャパン・クオリティへの支持は高く、価格の安さにおいては中国や韓国の製品に軍配が上がるものの、信頼という面で日本製の商品を選ぶ人は多くいます。
──特に人気のあるジャンルはありますか?
やはり強いのは漫画やアニメなどのコンテンツです。マスコンテンツではないものの、一定のファン層が存在します。漫画・アニメファンの多くは経済的に余裕があるため、消費単価も高いのです。日本の漫画やアニメキャラクターのグッズ販売イベントをタイで開催した際は、1体のフィギュアに10万円以上を費やすファンの姿が見られました。日本の漫画・アニメとアパレル企業のコラボアイテムも爆発的に売れています。
インバウンド消費で言うと、化粧品も人気です。中国人観光客の“爆買い”と同様、東南アジアの人々も日本を訪れるとドラッグストアで大量購入しています。もちろん自国でも日本の商品は購入できますが、関税により割高になってしまうのです。私の妻はタイ人なのですが、2022年に訪日した際は日焼け止めをまとめ買いしていました。「リーズナブルなのに品質が良い」と口コミで評判の商品だったようです。あとは全世界共通ですが、ラーメンやお菓子、コンビニのオリジナル商品といった日本食も人気です。
Facebookグループでの情報交換が盛ん
──東南アジアの人々は日本旅行や日本の店、商品に関する情報をどのように収集しているのでしょうか?
KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーのような人物の発信を参考にする場合もあれば、日本旅行に関する情報がまとまったWebメディアを参照する場合もあります。特徴的なのはFacebookグループを活用した情報交換です。タイでは日本旅行に特化したFacebookグループがいくつもあり、その中でユーザーが口コミや体験談を投稿したり、他人の投稿を参考にして日本旅行の予定を組んだりしているのです。規模の大きなグループには170万人ほどのユーザーが参加しています。
各グループでは管理人によってルールが決められています。PR投稿を一律NGとしているグループもあれば、費用を支払えば広告として投稿できるグループもある。Facebookグループから“プチバズ”が生まれることもあるため、日本企業は各グループのルールをチェックした上で効果的に活用すると良いです。
──インバウンドの文脈でよく使われるのが「旅前・旅中・旅後」という言葉です。これらに関しても何かポイントはありますか?
旅前にはやはりFacebookグループを活用したコミュニケーションが有効です。日本には英語表記がない場所がまだ多いため、多くの人は旅行中に日本国内の交通情報が掲載されているメディアをチェックします。旅中にはそれらのメディアを活用した施策がおすすめです。クーポン施策によって日本滞在中の人にアプローチする方法もあるでしょう。
旅後には様々な打ち手があるため、一概に「これがおすすめ」とは言えないのですが、たとえばギフト文化が根強いタイの旅行客向けにノベルティを配布し、周囲の知人・友人にお土産として渡してもらうことで商品の認知拡散や口コミを期待できるのではないでしょうか。