STEP2までは前編で解説しています
【STEP3】顧客価値定義:コア顧客に対するカテゴリや独自価値を定義する
ステップ3では、顧客に対する提供価値について、仮説をシンプルにまとめます。ここでは、最低限定義しておくべき4つの要素を紹介します。
1.コア顧客
ステップ2までで定めたコア顧客を改めて一言で整理します。
2.コア課題
コア顧客が抱えている最も重要な潜在課題を定義します。潜在課題とは、言い換えると、顧客が抱えているまだ言語化できていない課題を指します。顧客が言語化できていないため、私たちが課題について仮説を持ち言語化することが求められます。
特にBtoB商材で潜在課題について考える時、顧客のファクトから、顧客が結局どんな「不足」に直面しているのかについて仮説を立ててみると考えやすいです。顧客が直面する「不足」は、大別すると以下のようなものが考えられます。
a.人の不足:人材・サポート・ネットワークがない、または十分でない
b.手段の不足:モノ・アセット・技術がない、または十分でない
c.情報の不足:データ・知見・経験がない、または十分でない
d.カネの不足:経済的理由から選択しがない、または少ない
3.コア価値
コア顧客のコア課題に対して、自社で提供できて競合には提供できない独自の価値をコア価値として一言で定義します。ここで重要なのは、自社でも競合でも提供できる共通の価値と明確に区別して捉えることです。一般的には独自価値がコア価値になりますが、カテゴリが未熟であったり、多くの人が知らないマーケットやフェーズにおいては、共通価値がコアな価値になり得ることもあります。
コア顧客およびコア課題が決まれば、おのずとコア価値を定義できることが多いでしょう。ただ、コア価値をうまく定義しきれない場合は、コア課題に立ち戻って定義し直してみましょう。こうしたブラッシュアップによって、WHO/WHATの仮説がシャープになっていきます。
4.新価値提案
上記3つの要素を踏まえ、顧客への提案の仕方を決めていきます。その際に必須となるのが、カテゴリと価値提案の2つの要素です。
a.カテゴリ:「この商材は何か?」「顧客に“何”として想起・認識されたいか?」を定義します。既存カテゴリで価値提案をする場合には定義しやすいのですが、スタートアップや新規事業などで新規カテゴリを設定する場合は、慎重にカテゴリを定義する必要があります。
新規カテゴリが顧客にとってわかりやすいか、顧客が発話・発信しやすいか、新規性が伝わるか、自社が価値提供しやすいか、などの観点から新規カテゴリを定義しましょう。
b.価値提案:コア顧客のコア課題に対してコア価値を伝える際に、どのような提案をすべきでしょうか? 顧客に価値をそのまま伝えても、うまく伝わり切りません。顧客視点に立つと、コア課題を解決するコア価値を、どのようなキーワードやセンテンスを使うと伝わりやすいかという観点から、コンセプトやキーワードを一言で定義します。
ステップ3で定義した仮説は、必ずしもその時点で正解と証明できている必要はありません。むしろ、限られた情報やデータの中で、仮説を徹底的にシンプルかつ明確に決めることが重要です。また、決めた仮説についてチームで共通認識を持つことも同様に大切にしましょう。
はじめから正解があるのではなく、仮説を決め検証すること。特に、新しい価値提案のコンセプトやキーワードは、デジタル施策やキャンペーンなどで小さく検証し、勝ち筋を見つけていくことが肝要です。検証を繰り返し、勝ち筋を発見していくプロセスを再現性高く持てるかが、BtoBマーケティング戦略の成否を大きく分けます。
【STEP4】顧客体験定義:コア顧客の認知から契約までの提供体験を定義する
顧客や提供価値が決まっても、価値を届ける際の方針がなければ、価値を効果的に届けることはできません。STEP4では、顧客体験、すなわち顧客がサービスを認知してから契約するまでどんな認識変化(パーセプションチェンジ)をたどるのかを定義します。
おすすめなのは、それぞれのフェーズの認識変化を阻む障壁を定義することです。心理的な障壁もあれば、物理的・機能的な障壁もあるでしょう。各フェーズで顧客の認識変化を阻むバリアを、どんなメッセージ×タッチポイントで取り除いていくと効果的かを考え、コミュニケーションの方針を議論していくという流れです。
ボトルネックを考える時は、自社の営業ファネルについて定量・定性の両面から分析すると良いです。営業にヒアリングをして受注企業や失注企業を定性分析したり、商談議事録を見てみたりして、顧客が契約に至るまでの最も大きなバリアについての仮説を立ててみましょう。このようにファクトに基づいて、仮説を立てることは非常に重要です。想像ではなく、顧客の定性情報や行動のファクトを整理し、机上の空論ではない、確度の高い仮説を立てるように意識しましょう。
注意したいのは、顧客が言及した内容はそのままファクトではない可能性が高いということです。たとえば「価格が高い」「予算がない」という失注理由がありますが、その裏にある「価値合意ができなかった部分は何か」「それはどのようなバリアがあったからか」などを考えて仮説を立てます。