設計者と受講者の視座を合わせて「実践的な研修」作りを目指す
コロナ禍を経て、顧客体験(CX)の見直しとデジタル変革(DX)が進展しました。それにともない、デジマ人材の育成が急務となっています。しかし、人材の持つスキルや経験などには個人差があるため、組織全体でマーケティング力を強化するには研修やセミナーでのスキル習得は欠かせません。
ただし、いざ研修を実施しても、知識のインプットで終わってしまい、実践で使えるスキルまでは身につかないケースも少なくありません。その要因はいくつかあるでしょうが、たとえば、マーケティング組織が外部講師を招いて人材育成のプロジェクトを進める際に、そもそも組織が抱える課題(人材育成の方向)と教育内容に“ズレ”が生じてしまい、思った通りの結果に結びつかないといったことも多く見られます。当然、これでは「実践的なスキル」を身に付けることは難しいでしょう。
この問題を解決するために重要なのは、研修設計者と参加メンバーとの目線合わせをすることです。
今回は“主旨ズレ”研修の防ぎ方を紹介。研修内容と現場のニーズとの「ズレ」を回避し、チームに足りないスキルをメンバーが獲得する方法をお伝えします。
課題解決に直結しない“主旨ズレ”の研修
「解決すべき課題と研修内容が”ズレ”てしまい、学んだ気になって知識が身につかない」という失敗は具体的にどのような状況と判断で生まれてしまうのでしょうか。たとえば、次のようなケースが当てはまります。
組織目標や活動方針が曖昧 未経験のメンバーが具体的なイメージを持てていない研修
新規顧客の開拓により売上をアップさせるべく、新たにチームが結成され、戦略プランナー、クリエイティブ部門の出身者など様々なスキルセットのメンバーが集められました。しかし、チームのメンバーはチームの目標と自分のスキルを踏まえてもアサインされた理由が納得できていない状況。また、急な組織編成だった事もあり、目標達成に向けた具体的な活動方針が定まらずに、チームが動き出すことになりました。
このような状況下でチームのリーダーは、「新規顧客の開拓には企業のキーマンによる意思決定の考え方を理解し、デジマのコンサルテーションができる能力が不可欠」と考え、元大手コンサルファーム会社出身者による財務モデリング/エクセル研修を実施。しかし、各メンバーがチームとして求められる実務への具体的なイメージがないまま受講したため、実務に何の成果も生み出さない研修となってしまいました。
座学で一般論を学ぶのみの研修
新規サービス開発に向けて管理職を含んだプロジェクトチームが組まれたが、メンバー全員がサービス開発未経験。そのため、外部の研修会社に依頼して座学研修を行った。その内容は「未来の需要予測とプロダクト開発の思考法」という未来を先読みし可視化できるノウハウが身につくというもの。
しかし、一般論のみで実践的な内容ではないことから、受講者たちは学んだ気になっただけで実務には活かせなかった。