ライトユーザーがなぜライトユーザーなのか分析する
吉見:チョコパイでは、購入頻度が高い人と頻度が低くなってしまった人に対してそれぞれユーザーインタビューを行いました。その結果、購入頻度が高い人からは「家にストックできるケーキ」や「ケーキを食べたような気持ちになれる」といった声があがり、ブランドの原点を自然と理解してくれていることがわかりました。一方、頻度が低くなってしまった人からは「他のお菓子と同じ印象」「あまり印象がない」という反応がありました。したがって、購入頻度が低くなった人に購入してもらうためには、家に置けるケーキであることに気付いてもらう必要があることがわかりました。
さらにこれらの評価について深掘りすると、クリームに対する言及が対照的でした。
購入頻度が高い人は生クリームがサンドされていることでケーキみたいだという声が上がりました。しかし、頻度が低くなった人はクリームに対して特別印象がなく他のビスケット菓子と変わらないという回答でした。
一般的にも「ケーキといえば生クリーム」という強いイメージがあります。チョコパイではこれまでクリームにフォーカスしたことがなかったのですが、これによりケーキとクリームのバランスが重要だと考え、今回はクリームのリニューアルに注力することにしました。
山腰:爽健美茶では、ブランド価値やイメージ資産を残しながら、コンセプトやパッケージデザイン、ブランドの世界観をアップデートすることを決め、その上でターゲットを考えました。
山腰:これまではブレンド茶を好む層の女性がターゲットでした。しかし、今回は性別を問わず、20代を中心とした若年層で、無糖茶の種類を一つに決めることなく、買い回る人の選択肢に入るようにしたいと考えました。
次にコンセプトです。ブランドコンセプトである「爽やかに、健やかに、美しく。」は爽健美茶の変わらない価値だと考えています。しかし、その中の特に「美」の価値観については、30年を経て時代によって変化しているはずです。そこで、従来の捉え方だけでなく多様な価値観を含む表現にすべきだと考えました。さらに、「前向きになれる」という情緒的な価値も加えて訴求を行うことにしました。
これまでのブランドの世界観は「大自然」を思わせる非日常的なイメージでした。ですが、今回は日常風景の中に爽健美茶がある世界観を作り上げていこうと考えました。
ドラマ仕立てのCMで若者からの共感を呼ぶ
乙幡:これまで私が見てきた中でも、日本のメーカーは特に機能を訴求する傾向があると感じます。しかし、ブランド価値を高める上では、情緒をいかに捉えるかが重要だと感じます。
リニューアルされた爽健美茶の場合では、味などの機能的な部分ではなく、「ちょっと前向きな気持ちになれる」と情緒で訴求をしていて、非常によく考えられていると思いました。実際日本コカ・コーラさんでは、どのようにコミュニケーションをされたのでしょうか。
山腰:テレビCMを若い人の関心が高い音楽やドラマと連動させるなど、様々なタッチポイントでの訴求を行いました。具体的には、幾田りらさんの音楽、ABEMAとタイアップしたショートドラマ、そしてそれらとつながるドラマ仕立てのテレビCMです。SNSや店頭など、それぞれのタッチポイントに応じてメッセージを出し分けるようにしています。これまではテレビCMから発想がスタートして、どのように他のメディアで展開していくかという考え方でした。しかし今回は、テレビCMをコミュニケーションの構成要素の一つとして捉え、プロモーションを展開していきました。
山腰:メッセージにおいては、現代を生きる若い人の揺れ動く気持ちに寄り添って、「少し前向きな気持ちにしてくれるブランド」と伝えることを意識しました。
乙幡:確かにテレビCMを見てみると、機能的な訴求が一切ないですね。
山腰:このCMの役割は、爽健美茶に気付いてもらい、振り向いてもらい、良いなと共感してもらうことです。
また、CMで描かれる物語を深く知ることができるショートドラマをABEMAさんで観られるようにしたことで、若年層が自ら観たくなるような設計にしました。