クリエイティブの摩耗スピードが動画よりも遅い
小野(TikTok for Business):ローンチの背景には、クライアントの高いニーズがありました。日本はマンガ文化が根強いため、ユーザーが画面をスワイプする挙動に慣れているのです。マンガ関連のクライアントはもちろん、それ以外の業界からも開発を希望する声を頂戴し、2022年秋より日本を中心に開発をスタートしました。日本発で新しいプロダクトを開発するケースは、グローバルで展開するTikTokにおいて珍しいです。α版のテストの結果CPAが改善し、クリエイティブの摩耗スピードが動画に比べて遅いことも判明したため、2023年5月にβ版へ移行しました。
──カルーセルフォーマットを活用して、エン派遣ではどのような広告を配信したのでしょうか?
田村(エン・ジャパン):2023年6月からカルーセルフォーマットによる広告配信を開始しました。米澤さんから「カルーセルフォーマットはマンガのようなクリエイティブが多い」とうかがっていたため、他のプラットフォーム用に作成していた「事務のお仕事おすすめ4選」のクリエイティブを選びました。ポイントは複数の静止画を切り貼りするのではなく、ストーリー性を持たせたこと。おすすめの仕事一つ目、二つ目、三つ目……と、流れがわかるような組み合わせにしました。
──実際にカルーセルフォーマットを活用してみていかがでしたか?
田村(エン・ジャパン):配信を始めた6月のCPAは、2月から5月の数値と比較して約4分の1になりました。コンバージョン数についても、前月の4倍以上に伸長するなど期待以上の成果が表れ、思わず「本当ですか?」と米澤さんに電話してしまいました(笑)。
米澤(セプテーニ):当社にとっても「人材系企業×カルーセルフォーマット」は初めての試みだったため、まさかこんなにすぐ成果が出るとは思っていませんでした。カルーセルフォーマットは他のプラットフォームでも提供されていますが、CVRの改善はTikTokが最も顕著に出たと感じています。
ユーザーが指を動かして閲覧することの効用
──広告運用のプロフェッショナルとして、またエン派遣の広告運用に伴走してきた立場から、米澤さんは今回の成功要因がどのような点にあったとお考えですか?
米澤(セプテーニ):当社では「ユーザーが指を動かす」がキーワードだと考えています。従来のTikTok広告動画フォーマットは、どちらかというと広告主側がプッシュするものと捉えられがちですが、カルーセルフォーマットはユーザーが自ら指を動かして広告を閲覧します。この能動性により、TikTok側で「ユーザーが広告に興味を持っている」と見なされ、アドのスコアアップにつながっているという仮説です。
実際、数値の中で最も伸びが良かった項目がCVRでした。アドスコアが高まった分、コンバージョンする可能性の高いユーザー層に広告を配信するプラットフォーム側のレコメンドシステムとの相乗効果があったのではないかと推測します。
そして何より、カルーセルフォーマットには見た目の新鮮さがあります。TikTokで上下のスワイプに慣れ親しんだユーザーにとって、横にスワイプする動作は新鮮な体験だと言えるのではないでしょうか。おすすめの仕事を紹介するクリエイティブの良さに加え、ユーザーのアクションを促すカルーセルフォーマットの特徴が「次の画像も読み進めたい」という気持ちを刺激したのだと思います。
平八重(TikTok for Business):ユーザーが自身のペースでクリエイティブを閲覧できる点もポイントだと思います。今回のケースで言うと、おすすめの事務の仕事を1選、2選とスワイプしていくうちに、潜在的なニーズを刺激されたユーザーが多かったのでしょう。