企業がAIを使いこなすには
──AI活用についてお聞かせください。帝国データバンクの調査では、生成AIを業務で活用・検討している企業は61.1%となっていましたが、昨今の企業におけるAI活用はどのような状況でしょうか。
冨田:AIなどのテクノロジーは可能性を広げるものですし、有効に活用すればビジネスの成長につながることは間違いないと思います。ただ、どんなに優れたテクノロジーであっても、それを活用する技術も必要になってきます。
たとえば急に会社から「AIを活用して業務をやりなさい」いわれても、すぐに使いこなすのは難しいですし、何に活用するのがよいかもわからない企業も少なくないように思います。
──AIを使いこなすには、どういったことに注意するとよいでしょうか。
冨田:AIなどのテクノロジーありきで「何か使えるタスクはないだろうか」と考えてしまいがちですが、それは順序が違うと考えています。本来は、色々なマーケティングのタスクがある中、「ここはAIを活用するのが適しているだろう」という箇所に使っていきます。その入り口と出口が逆になってしまうと、うまくいかないケースもあるように思います。
AIを活用し、Web広告における「プロセスハック」を実現
──Web広告でAIを活用する利点を教えてください。
冨田:弊社ではプロセスハックと呼んでいますが、業務効率化できるのが一番のメリットです。
たとえば弊社のプランナーは、案件の競合など他社のクリエイティブの傾向をぱっと把握できます。というのは、クリエイティブ戦略を立てるための市場調査において、AIR DesignではAIを活用します。
弊社で行う市場調査は、公開されているWeb広告やLP、バナーなど毎月200万件以上のクリエイティブデータを収集。そのデータ群を、AIによってカラーバランスや訴求の方向性、ビジネスモデル、アプローチ方法などで分類し、戦略立案のために利用するデータベースを構築しています。これはReverse Designという弊社の特許技術を使って行っています。
──他にはどのように活用していますか。
冨田:クリエイティブ制作では、画像生成AIを活用しています。撮影などに比べて予算や制作時間を抑えつつ、フォトストックサービスのように競合とのかぶりを防げることがポイントです。
AIで思った通りの画像を生成するためには、適切なプロンプトによる指示が欠かせませんが、弊社には適切なプロンプトを作成するための高いスキルと知見があります。
冨田:さらに、クライアントから提供していただいたターゲットの情報やビジネスモデルなどを基にChatGPTなど複数のテキスト生成AIを活用して、簡単にペルソナ設計を出力することを可能にする独自フローも開発しています。また、コピーライティングやディスクリプションの作成などにもテキスト生成AIを使っていますね。
AIで生成されたものは必ずしもそのまま使うのではなく、それをたたき台として、人間が修正を入れて仕上げます。こうすることによって、制作のスピードを飛躍的に上げることができています。