新興プラットフォーマーが検索連動型広告に参入
──今うかがったような検索体験が広告に与える影響を教えてください。
影響は確実にあります。ただし、Microsoft、Googleの両社とも現時点ではあくまで実験段階ですから、具体的な影響はまだ何とも言えません。特にGoogleは検索体験が少し変わるだけで屋台骨である検索連動型広告の収益に多大な影響が生じるため、慎重にならざるを得ないのだと思います。何度もテストを重ねて、収益への影響がプラマイゼロ以上なら実装するわけです。実際私がSGEで検索すると、広告が表示される場合もあればされない場合もあります。表示される位置も異なります。そのようにして、ユーザーの検索体験を損ねることなくレベニューニュートラルが目指せるポイントを探っているのでしょう。
Microsoftが見ている景色は、少し異なるかもしれません。もちろんBingでもテストは重ねているはずですが、同社にとって広告事業は新しいチャレンジ。生成系AIが導く回答の中に「Ad」と添えたテキスト広告を表示するなど、アグレッシブなアプローチをしています。「今後の検索エンジンおよび検索連動型広告はこうなる」という断言は誰にもできませんから、プラットフォーマー側もユーザー側も、試しながら予測するしかないと思います。
──電通が発表した「2022年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析(図1)」によると、検索連動型広告の媒体費は9,766億円で、インターネット広告媒体費に占める構成比は39.4%でした。大手検索エンジンの生成系AI搭載などにより、この割合は今後変化すると思われますか?
生成系AIというより、サードパーティークッキーによる影響のほうが大きいと思います。サードパーティークッキーの廃止にともない、リターゲティング広告のパフォーマンス低下が懸念されていますから。パフォーマンスが低下すると、そこに投じる予算も当然下がる。このような状況において、サードパーティークッキー廃止の影響を受けづらい検索連動型広告はやはり強いですよね。
リターゲティング広告に替わる新しい広告の出し先として、GoogleやMicrosoft以外のプラットフォーマーが提供する検索連動型広告が挙げられます。たとえばTikTokは2023年8月に「Search Ads Toggle」の本格提供を開始しました。InstagramやFacebook、Xでも検索連動型広告にシフトする動きが見られますし、リテールメディアもホットになりつつあります。
特筆すべきはAmazon Adsですね。同じく2023年8月にAmazonは、Pinterestなどオフサイトへの広告配信を開始すると発表しました。この動きは今後広がっていくと思っています。Amazonは世界最大のリテールメディアですが、ビジネスのさらなる拡大を目指して出し先を外に求めたのでしょう。広告関係者はこの動向をウォッチするべきです。
このとおり、検索連動型広告の市場は戦の様相を呈しています。検索にはユーザーの「知りたい」「探したい」という強烈なインテントが根差していますから、そこにマッチした広告を出せると非常に強力なわけです。そのための仕掛けの一つが生成系AIと言えるかもしれません。新興プレーヤーがどんどん参入していることを広告・マーケティティング業界の方々は意識しておいたほうが良いと思います。
