※本記事は、2023年10月刊行の『MarkeZine』(雑誌)94号に掲載したものです
【特集】本格AI時代到来 広告・マーケティング業界の行方
─ AI時代の来し方行く末 ビッグウェーブを乗りこなすヒント
─ 生成系AIで検索連動型広告はどう変わる? プラットフォーマーとマーケターの現在地(本記事)
─ 独自のデータを持っていることが生成AI活用の差別化になる
─ AIで広告クリエイティブの制作はどう変わる?サイバーエージェントに聞く、変化と未来
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:AIが最大限の力を発揮できるよう環境をいかに構築するか
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:生成AIにできること、クリエイターにしかできないことは?
─ ChatGPTで話題沸騰となった2023年、今日までに見定めたAI活用のリアルな現在地
検索連動型広告は消滅しない
──巷では「生成系AIの台頭によって検索連動型広告が消滅する」などと言われていますが、なぜこのような言説が流布しているのでしょうか?
2023年2月、Microsoftが「Bing」に次世代言語モデル「Prometheus(プロメテウス)」を搭載しました。Googleが生成系AIによる検索体験「Search Generative Experience(以下、SGE)」の試験運用を日本で開始したのは同年8月です。
「ChatGPT」然り、生成系AIを活用するとユーザーは対話形式で望む答えにたどり着くことができます。BingやSGEのインターフェースを見て「検索行動がそこで完結してしまうのでは」「検索回数が減って広告のインプレッションが減ってしまうのでは」などの不安を覚えた人が、極端な言い方をしているのだと考えます。
──本当に検索連動型広告が消滅する可能性はあるのでしょうか?
それはあり得ません。なぜなら、検索エンジンを提供する大手プラットフォーマーの収益源が検索連動型広告だからです。「すべての検索クエリに対して生成系AIで答えを返そう」とまではMicrosoftもGoogleも考えていないでしょう。一部の関係者が過剰反応しているだけだと思います。
──生成系AIの搭載によって、Google検索やBingではどのようなことが実現可能となったのでしょうか?
SGEは新機能体験プログラム「Search Labs」に登録すれば利用できます。たとえば「ハワイ旅行 おすすめは?」と投げかけてみてください。「おすすめの旅行時期」や「おすすめのレストラン」など、こちらが知りたいと思いそうな項目がサジェストされるはずです。「たしかにこんなことが知りたかった」と思いながら特定の項目をクリックすると、直前の回答を踏まえてさらに細かい粒度の項目がサジェストされます。そのようにして検索結果が絞り込まれていった結果、ドンピシャの回答が提示される。非常に楽ですよね。
Microsoftアカウントがあれば、いくつかのサンプルクエリでAI検索を体験することができます。検索窓に質問を入力すると、検索結果画面の右側部分に生成系AIの回答が表示されます。回答の一部がクリッカブルになっており、Prometheusが教師データとして参照したであろうWebサイトに遷移するような仕様です。