ユーザーに信頼されるカギとなるのは?
そうした流れの中でUGC、つまりユーザーの作るソーシャルコンテンツがカギになると山崎氏は話す。UGCによってリテールメディアが盛り上がれば、ユーザーは購買だけでなくサイト訪問自体も目的となっていく。
たとえばAmazonで買い物をする時、必要なものを検索して求めている商品を一直線で購入するだけでなく、なんとなくサイトを閲覧し新しいキャンペーンに気づいて購入するといった、“セレンディピティ(偶然の出会い)”が生まれる。
「これまでのECサイトは商品を買うための場所でした。ソーシャルメディアや口コミサイトで商品を吟味した後の購入プロセスをECサイトが担うことが多かったのですが、現在はECサイト自体がコンテンツを豊富に抱えユーザーを集客する場所になってきています」(山崎氏)
またUGCの重要性が高まっている背景には、ユーザーの広告への忌避感もある。調査によれば、企業の広告と比べカスタマーが発信する情報は6倍も信頼されている。リテラシーの高いユーザーが増えた今、「企業にとって都合の良い内容を発信しているのではないか」という意識があるため、レビューやQ&AといったUGCの存在が信頼につながるのである。
口コミはブランドECとリテールECのどちらにも役立つコンテンツだが、特にリテールECでは複数社の商品を横並びで検討するため、他のユーザーの口コミを参照しながら買い物ができCXを高める要素となる。
「レビュー機能を加えることで悪口や耳の痛い意見が来てしまうのではないかと敬遠するのではなく、次世代でより良い商品を開発するための情報源として、UGCを前向きに捉えていくべきではないか」と、山崎氏は強調した。
ECにおける新たなUGC活用「キュレーション」
さらにECにおいて口コミやQ&AといったUCGは、SEO改善にも活用が期待できる。実際、米国Amazonへの流入の約75%は、GoogleにインデックスされているAmazonのレビューページ経由だという。検索エンジンのロジックはGoogleが日々アップデートしているが、基本的には本質的で中身のあるコンテンツが上位に来るように調整されている。そのため、オーガニックなユーザーの口コミはSEOの視点でも価値が高くなるのだ。
昨今のECサイトは、一つの商品に対してコストパフォーマンスや品質をはじめとした“複数の側面”から評価したレビューを書きこむことができ、レビューを投稿したレビュアーの年代・性別などの属性も参照できる。そのため、口コミやレビュー、Q&AといったUGCが貴重なデータとなるのだ。
また今後は、ユーザーがブランドを横断した商品の組み合わせを提案する「キュレーション」も、有意義なUGCとして期待されている。ZETAは2023年8月から、ECキュレーションエンジン「ZETA BASKET」の提供を開始した。
「アパレルのブランドや店舗スタッフが、お勧めの商品を組み合わせてコーディネートを提案しますよね。ZETA BASKETでは、ユーザーが『A社のこのアイテムとB社のこのアイテムを組み合わせたら非常に良かった』という消費者視点で商品の組み合わせを投稿できます」(山崎氏)
各社の強みを比較し組み合わせられるのがリテールメディアのメリットであり、こうしたキュレーション的コンテンツはより盛り上がりやすい。山崎氏は「リテールメディアでは、口コミやQ&Aに次ぐUGCとして盛り上がる可能性がある」と見据えている。