※本記事は、2023年12月刊行の『MarkeZine』(雑誌)96号に掲載したものです
【特集】2024年・広告の出し先
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リテールメディア、AI……2023年を振り返る
──まずは2023年の広告プラットフォーム動向を整理できればと思います。主要な動きを教えてください。
アタラのオウンドメディアUnyoo.jpなどでも紹介していますが、年頭に次の5つを2023年業界予測として挙げました。概ね見通しどおりになったかと思います。
- 2023年は日本のリテールメディア/xメディア(※注参照)元年になる
- AIの衝撃:ChatGPTが「Bing」に搭載され、検索エンジンのユーザー行動にも広告ビジネスにも影響する
- Google、Facebookがシェアを引き続き落とし、TikTok、Amazon、Apple、Microsoft、Pinterest、リテールメディアがシェアを伸ばす
- Metaがメタバース戦略を見直す
- レイオフによる人員整理は進むが、人材不足はますます進む
順番に見ていくと、リテールメディアについては大手ドラッグストアを中心に既に取り組みが始まっていましたが、2023年に入り、ファミリーマートとドン・キホーテが協業を発表しました。イオン子会社のイオンネクストのネットスーパー「グリーンビーンズ」もリテールメディア前提のビジネス設計をしています。
このように、日本でも小売業界全体で動きが活発化しています。xメディアは個社ごとの動きが大きいですね。広告という新規ビジネスへ舵を切り実行するには、数年レベルでの体力と、経営レベルでの覚悟が必要です。実施企業は真の意味でDXを行っているとも言えます。
2つ目、AIの衝撃は言うまでもないと思います。広告領域でもMicrosoftがAIをBingへ搭載したり、Googleも試験提供したりしました。広告へ本格導入されたわけではないのでビジネスへの影響は発展途上ですが、市場に大きな衝撃が走りました。
3つ目については、2022年時点でもプラットフォーム分散期であるとお話ししましたが、分断が続いています。GoogleとFacebookの二強が引き続きシェアを落とし、その予算がTikTokなどのTier2メディアやリテールメディアに分散しています。
4つ目のメタバースは、AIへの注力にともなう戦略の見直しのためか、2023年は表舞台に出ることが少なかった印象です。5つ目については昨年秋頃から各社のレイオフが始まり、2023年の6月頃まで話題になっていました。通常、人員整理が終わると大手企業中心に新たな人材獲得が進みます。しかし、3で触れたとおり新進メディアが増えているので、そちらに人材が流れてますし、デジタル領域の増え続けるニーズに対して全体的に人材の供給が追いつかず、結果的に人材不足は改善していない状況です。
個人的には、年内にリテールメディアがもっと広がりを見せるかと思っていましたが、緩やかだった背景には、人材の問題もあったのではないかと思っています。
※xメディア:小売業者以外の事業者が保有する消費者データを活用して展開する広告プラットフォーム事業