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【特集】2024年・広告の出し先

2024年広告業界5つの予測。事業会社も広告会社も「改めて考える」ところからスタートを

Google一強の崩壊、各社の検索連動型広告、外部配信が進む

──プラットフォーマー各社の動きはいかがでしたか?

 Microsoftの広告事業は堅調に成長しています。10月にはゲームソフト会社Activision Blizzardの買収を完了し、ゲーム内広告の加速が考えられます。また、同月にpub Centerをリブートし、外部配信面の獲得にも動き始めています。広告面が増加するので、広告の出し先として意識が必要です。

 Amazonの動きにも注目です。Pinterestで検索するとAmazonのスポンサープロダクト広告が表示されるようになります。実はAmazonは、他にも6社へのオフサイト配信を発表しています(2023年4月時点)。端的に言えば、Amazon版アドセンスですね。外のプロパティに広がる動きとして注目しています。

 11月にはMetaと提携し、FacebookやInstagramのアカウントをAmazonにリンクさせる新機能を発表しました。これはかなり大きな動きです。Snapと同様の契約も直後に締結していますので、今後もAmazonが勢力を拡大していく可能性は大きいです。

 TikTokも検索連動型広告を開始しましたし、OOHソリューション「OutofPhone」も発表しました。ビルボードや映画館、その他店舗などにTikTokコンテンツを表示できるようになります。当然、広告も入ってくるでしょう。

 検索連動型広告は各社が注力しているので、来年さらに動きが出るでしょう。商品やサービスに合ったユーザーが存在するプラットフォームを選び、予算を投下していく必要が出てくると考えられます。

2024年5つの予想

──これらの動きを踏まえた上で、2024年はどのような1年になるとお考えですか?

 まず言えることは、2024年はこの数年で最も変化の大きな年になるであろうということです。その上で、次の5つを予測として挙げます。

  1. Chromeの3rd Party Cookieサポート廃止が開始。各社はプライバシーサンドボックスなどの代替手段への対応や検証に追われる
  2. 日本のリテールメディアでブランドによるPoCや実験的なキャンペーンが増える
  3. AIのプラットフォーム・ネイティブな実装はさらに増える。先進マーケティング企業において、ハイパー・パーソナライズの事例も出てくる
  4. Google、Facebook、TikTokを中心に、収益の多角化は進む
  5. MFAと向き合う1年に

 3rd Party Cookieのサポート廃止は以前から発表がありましたが、来年は対応や検証に追われる年になるでしょう。Googleは代替となる新技術「プライバシーサンドボックス」を提唱し、7月にAPIを一般公開しました。さらに、2024年第1四半期にChromeで3rd Party Cookieの1%をサポート廃止予定です。つまり、Cookieがない世界とある世界での効果の比較や検証を促しているわけです。

 とはいえ、全トラフィックの1%ですから、正確な検証はできないのではないかという声も多く、パーセンテージが上がっていく2024年後半から2025年にかけて山場を迎えると考えられます。アドテク各社は当然対応をしていきますが、パブリッシャーや広告主も、検証してくれるパートナーとともに対応を進めていくことを推奨します。また、Cookieの問題はGoogleだけではありませんから、他の代替手段も含めて研究していかなければなりません。

 リテールメディアも引き続き、活発化するでしょう。2023年はリテールメディア元年だと説明しましたが、これは小売業が広告事業を開始して自社のデータを使う場を作ったという意味です。つまり、ブランド側はまだ様子見。一部の先駆的な企業が試験として取り組んでいる状況です。しかし、関係者の話を聞くと、経営側が活用へ意識を向け始めているようです。そのため、来年はPoC(概念実証)や実験的な予算でキャンペーンを実施するブランドが増えるでしょう。

 リテールメディアの取り組みを登山にたとえると、小売企業によるプラットフォーム構築=2023年の日本は1合目で、メーカーによるPoCは2合目です。さらに、フォロワー企業へ活用が拡大するのが3合目。そして、ブランドと小売業が課題を互いに理解した上で継続的に、体系的に解決していく協働プロセスJoint Business Plan(以下、JBP)が4合目です。

 米国は今、ここにいます。私は日本のブランド企業もJBPの意識を持ってほしいと考えています。

 JBPで成果を出している企業の共通点は5つです。

  1. テストを重ね知見を蓄積する。
  2. ブランドはパートナーをチームの一員と考え、そのための透明性を担保する。
  3. 売り手の原理ではなく買い手中心に考える。
  4. サイロにせずオムニチャネルで考える。
  5. 正しい体験を提供して、その先にマネタイズがあるという順番を違えない。

 極論ですが、プラットフォームという場にお金を投じれば、よろしくやってくれると思っているブランドも存在します。そうではなく、自分たちも参加してともにリテールメディアを作っていく感覚が必要です。

 AIについては、既にプラットフォーム各社が広告の管理画面にAIを組み込み始めています。この動きは加速するでしょう。問題は、各管理画面でクリエイティブを生成するとブランドやキャンペーン全体でのイメージの統一が難しいことです。そのため、単一プラットフォームで出稿している中小企業がこの機能を活用していくと考えられます。一方、一部の先進企業はハイパー・パーソナライズの文脈でクリエイティブ生成にAIを活用し、自社システム開発により、プラットフォームを超えた広告配信を行うでしょう。

 プラットフォーマーの収益の多角化は、直接的に広告に影響するものではありません。ただ言い換えれば、一部企業は広告事業だけでの成長に限界が見えてきたわけです。広告主や広告会社が気にすべきことは、成長の鈍化に焦ったプラットフォーマーが利用者の体験を損なうようなマネタイズを展開しないかどうかでしょう。

 最後のMFAとは「Made-for Advertising」または、「Made for Arbitrage」の略で、明確な定義はありませんが米国を中心に問題視されています。記事をクリックしたら、広告ばかりのサイトに飛ばされた経験がある人も多いと思います。

 MFAは長く存在してきましたが、AIの自動生成によって看過できないボリュームになってきています。技術およびポリシーとしてMFAは弾く、マインドセットとしてMFAを使わないというコミットメントが重要になってきます。

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これでいい? の問いから

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 14:57 https://markezine.jp/article/detail/44367

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