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そのヘビーユーザーは利益をもたらしているか? 一休が売上10倍、営業利益率5割超を達成できた理由

ヘビーユーザーは利益をもたらしているか?

自社にとって本当に大事な顧客は誰なのか」を明らかにする分析

 誰もが「事業成長のためにはヘビーユーザーの存在が重要である」と感じているはずだ。しかし、ヘビーユーザーによって一体どれほどの“利益”がもたらされているのかを考えてみてほしい。ヘビーユーザーに対して大量のポイントを還元しているケースもあるだろう。また、新規ユーザーの獲得が好調な企業でも、マーケティング投資に多くのお金がかかっているケースはある。

 一休では、顧客単位の利益を可視化しているそうだ。売上を「変動費」と「限界利益」で分解し、両者の比率をグラフ化する。榊氏が例示する上のグラフの場合、固定費の比率が20%で新規ユーザーの限界利益は出ているものの、利益自体は出ておらず、赤字であることがわかる。理由はグラフを見れば明らかで、変動費①(例:マーケティング投資費用)が負担になっているためだ。

「ほかにも利用目的(出張ユーザーとレジャーユーザー)など、様々な観点で利益の可視化ができます。これらの分析は『自社にとって本当に大事なお客様は誰なのか』という問いに対して非常に有効です」(榊氏)

 これらの細かなデータを分析のたびに引っ張ってくるのは大変だろう。一休の予約レコードのデータベースでは、すべての売上に対してコストが同時に計算されているという。

「たとえば仕入れ原価が◯◯円で、ポイント費用が◯◯円で、クーポン費用が◯◯円といった、お客様の購入に紐づくコストは比較的簡単に計算できると思います。当社では広告宣伝費がどの売上に寄与したかも分析し、一つひとつの取引にコストとして紐づけています。これによって『この予約がもたらす利益はいくらなのか』が見えるようになっているのです」(榊氏)

 1件1件の予約でPLを集計しているから、1日ごとの利益がわかるようになっているのだ。

約100枚分のレポートを社長が毎週作成する理由

 日々のPLを見える化する目的は「AI活用にある」と榊氏。

「一休では、AIでレコメンドシステムを構築したり、プライシングを自動化したりしています。この場合『AIが昨日何のホテルで、どの程度の割引をしたのか』を人がモニタリングする必要があるのです。日別のPLを明らかにできなければ、1ヵ月後の確認時に大赤字だったということもあり得ますから、モニタリングにはしっかりと取り組んでいます」(榊氏)

 顧客行動を見える化するためのテクニカルな方法を紹介してきた榊氏。ここからは、一休のデータドリブンな組織運営を下支えする仕組みについて語る。榊氏は、前週の事業状況を細かく分析した約100枚のレポートを作成し、毎週月曜日の朝に全社のメンバーへ共有しているそうだ。ほぼすべての社員が、このレポートに目を通してから業務をスタートしている。

「当社で顧客行動の見える化に取り組んでいる人間は私一人だけです。たまたまデータ分析が好きで、得意な私が率先して取り組んでいます。必ずしも社長がやる必要はありません。社内でどなたか一人が取り組めば十分です。データは基本的には誰が見ても同じ結果になるはずですから、少ない人数で取り組むべきだと思っています」(榊氏)

 このレポーティングによって「あの数字どうなってる?」という上司から部下への確認が減り、数値を報告するためだけのミーティングも不要となる。つまり、施策の立案など創造的な業務に皆が注力できるわけだ。

「データドリブンな企業への変身は『個の力』で可能です。データは会社にとって酸素のようなもの。どれだけ見てもすり減らず、大きく吸い込むことで大きな活力が生まれます。今日ご紹介したフレームワークに則って分析すれば、分析結果は自社の共有資産になるはずです。ぜひ取り組んでみてください」(榊氏)

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この記事の著者

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44470

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