学生コミュニティ×老舗企業の貝印が挑んだ、認知拡大施策
同社にはZ世代に関する施策について、多くの課題が寄せられる。中でも多いのが「学生やZ世代に効くプロモーション手法がわからない」だ。セッションでは、そうした課題を解決し「ブランドの“推し”化」と「同年代の声を取り入れる」ことに成功した2つの事例について、Z世代向け案件を中心としたプランニングを手掛ける中西氏が紹介した。
1つ目は、老舗刃物メーカーである貝印の事例だ。貝印では50歳以上のブランド認知率が80%である一方、Z世代は約20~30%と低いことが課題だった。そこでZ世代向けリブランディングの取り組みとして、マイナビの学生コミュニティからメンバーを募り、貝印の広報チームと連携した共創プロジェクト「貝印の『紙カミソリ』みんなに広めよう!プロジェクト」に着手した。
同プロジェクトでは、紙のハンドルに金属の刃が付いた「紙カミソリ」を通じて、Z世代の認知度向上を目指した。紙カミソリはテスト販売時に3日で完売するなど、非常に注目されているアイテムだ。
「若者向け」というブランドイメージが33ポイント上昇!
学生メンバーによって生み出されたアイデアの一つに「KAMIカミソリ」がある。カミソリに「受検の合格祈願」という付加価値を付け、神社の新しいラッキーアイテムにするというものだ。
実際に、このアイデアをもとにした新パッケージの紙カミソリを販売。子どもの合格を祈願する親が応援メッセージを記入できる欄を設けるなどの仕掛けを施した。また、都内の神社で祈祷されたものを正月から数量限定で無料配布するキャンペーンも実施した。
「特別仕様の紙カミソリを受け取った学生がSNSで拡散しやすいように、毎年春から盛りあがる『♯春から大学生』のハッシュタグを付けました。結果、Z世代を中心に拡散され、メディアにも取り上げていただけました」(中西氏)
また、大学生向けWebメディア「マイナビ 学生の窓口」に特設ページを作り、プロジェクトの途中経過について掲載。バックグラウンドトストーリーなどのコンテンツを公開した。
同施策の結果、貝印に対し「若者向けのイメージを持っている」という学生が施策前は0%だったのに対し、実施後33%まで上昇した。さらに貝印が学生に抱いてほしい「伝統ある」「安心・信頼できる」「代表的なブランド」といったイメージも、軒並み50%台まで上昇させることに成功した。
貝印の事例に対し、学生のアイデアが本当にビジネスに活用できるのか疑問に思う人もいるかもしれない。中西氏は「確かにビジネス言語で話されていないので、そのままだと難しいこともある」とした上で、「そのアイデアをいかにビジネスに落とし込むかは、これまで多くの企業の課題に向き合ってきたマイナビだからこそ実現できるポイントです」と話した。