「HOW」にとらわれず、“2つの理解”をマッチング
──全社の中でマーケティング組織が果たすべき役割、経営(事業)活動においてマーケティングがもたらすべき価値について、どのように考えられていますか?
当社は、THE MODEL型の組織体制で、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスへとバトンを渡す形式です。その中でマーケティング部は最初に認知をとってリードを獲得するという、営業プロセスの重要な役割を担っていることになります。
マーケティング部は利益を生み出すことを求められているため、リード獲得だけでなくROIも重視しています。毎回施策の実行前には施策の利益貢献度を試算し、経営陣から承認をとります。短期的な成果と、事業貢献など中長期的な成果との両方のバランスを持った姿勢が求められているのです。
マーケティング活動は、HOWが重視されやすい傾向がありますが、我々は「自分たちのプロダクトでどのような価値提供ができるのかを突き詰めること」、つまり顧客理解とプロダクト理解の2つをマッチングさせることを重視しており、それがマーケティングの役割だと考えています。これら両方をきちんと押さえていなければどんなに立派なHOWを考えても中身がないものになってしまいます。
だからこそ顧客理解とプロダクト理解の両方を深めることが、結果的にROIの向上にもつながっていくと考えています。
──近年特に力を入れてきたマーケティング活動をお聞かせください。
現在は「Sansan」も「Bill One」も特にエンタープライズ企業の強化に取り組んでいます。エンタープライズ企業の場合、半年ほどかけて数十名の方と商談を行い、受注するケースも少なくありません。そのため、一般的なオンライン・オフラインマーケティングに加えて、決裁権限を持つエグゼクティブの方々へタッチポイントを増やすためのイベント開催などにも力を入れています。
マーケティング施策において企画は非常に重要で、このように「WHO」に即した企画を考えるためには、顧客理解を深めることが必要です。そのために我々が積極的に行っているのが顧客と接点を持つことです。マーケティング担当者も展示会に参加したり、営業担当の商談に同席したりして、お客様と実際に会話する機会を意識して作るようにしています。
企画を作るためには実感のあるペルソナを作ることが必要であり、そのためにもお客様のリアルな声が欠かせません。「この施策を実施すれば、このようなお客様はどう感じるだろうか」を考えられるよう、企画フォーマットを統一しています。クオリティを担保するためにも、フォーマットを統一することも大きな意味があると思います。
──ブランド価値向上のために行っている施策はありますか?
両サービスともに機能開発を進めています。「Sansan」は名刺管理にとどまらない価値を提供し、ビジネス機会の最大化による売上向上、業務改善によるコスト削減を目指し、機能拡張をしています。
「Bill One」も同様です。元々は、請求書受領領域の課題を解決するサービスとして展開していましたが、今では冒頭に紹介した「Bill Oneビジネスカード」をオプションとして提供。決済領域まで拡大をしています。サービスリリース当初から「月次決算を加速する」ことにこだわっており、経理担当など特定の方々の業務課題だけでなく、会社全体の課題を解決できるサービスを目指しています。