注力すべき路線は?居住者の属性も可視化
──具体的な分析内容と、得られた示唆を教えていただけますか?
岩楯(三井住友カード):フェーズ1の「近鉄沿線居住者の分析」では、各駅の利用者が多いエリアを近鉄グループホールディングス様に示していただき、当社の決済データを用いて分析を実施しました。これにより、居住者の属性や消費動向、ボリュームゾーンにあたる層を特定できます。また、路線ごとの居住者の特徴も明らかにし、各路線の色に合わせてマーケティング施策を立案できるようにしました。
岩楯(三井住友カード):近鉄沿線の全体的な傾向として、50代女性の比率が高いことや、高年収の方が多く住まわれていることなどがわかりました。細かく見ていくと、たとえば難波線沿いには若い男性の居住者が多く、奈良駅周辺は近鉄グループの各種サービスを利用されている方の比率が他の駅と比較して高かったです。
永田(近鉄):近鉄の鉄道路線には300近くの駅があり、路線によって利用実態も様々です。これまで肌感で捉えていたことをデータで裏付けることができたと思います。
岩楯(三井住友カード):フェーズ2のロイヤルティ分析では「近鉄グループ内事業の累計利用金額」と「全購買における近鉄グループの利用率」という2軸でマトリクスを作成し、当社の会員を次の4タイプに分類しました。
優良顧客
近鉄グループ内事業の累計利用金額が高く、全購買における近鉄グループの利用率も高い
優良顧客予備軍
近鉄グループ内事業の累計利用金額は高いが、全購買における近鉄グループの利用率は低い
一般
近鉄グループ内事業の累計利用金額が低く、全購買における近鉄グループの利用率も低い
未利用
近鉄グループの利用なし
優良顧客予備軍の利用率を高めるヒント
岩楯(三井住友カード):着目したのは、高い購買力を持ちながらも近鉄グループの利用率が低い「優良顧客予備軍」です。具体的には30~40代の男性が優良顧客予備軍として浮かび上がってきました。
当社のキャッシュレスデータを用いれば、優良顧客予備軍が近鉄グループで利用している業種と、近鉄グループ外で利用している業種がわかります。これによって近鉄グループホールディングス様が注力すべき事業を明らかにし、優良顧客予備軍のグループ内利用率を高めるためのヒントを示しました。
荒木(三井住友カード):分析を実施する前は、弊社と近鉄グループホールディングス様の提携カード「KIPS-三井住友カード」の保有者が、ロイヤルティの最も高い顧客であるという仮説を立てていたんです。ところがふたを開けてみると、KIPS-三井住友カードをお持ちでなくても十分に優良なお客様が数多くいらっしゃいました。この点は意外でしたね。
荒木(三井住友カード):KIPS-三井住友カードを保有していないのに近鉄グループをよく利用しているということは、つまりその方がポイント還元率などの強い動機によらず近鉄グループをフラットに利用していると言えます。このような方々の受け皿として、近鉄グループホールディングス様がこれからリリースする予定のアプリがうまく機能するのではないでしょうか。