※本記事は、2024年6月刊行の『MarkeZine』(雑誌)102号に掲載したものです
ブランドは気まぐれな消費者とどう向き合うべきか?
─ 大多数のマーケターが意外と理解できていない?リキッド消費を正しく理解し戦略に落とし込むためのポイント
─ 問われるのは“バランス感覚” コト消費時代のメガトレンド「応援消費」に企業はどう向き合うべきか
─ ブームから浸透へ。第3の消費潮流「トキ消費」を生み出すための3つのヒントを解説
─ 大きなトレンドを追いかけると“空振り”になるかも?若者研究のプロに聞く「Z世代×界隈消費」の実態
─ 「試用」を「利用」に パナソニックのサブスクサービスがつくる新たな顧客接点(本記事)
─ 100年先もビールを楽しんでもらいたい キリン「晴れ風ACTION」が消費者の応援を集める
─ 「丸亀製麺が食べたい」を喚起するために何をしている?トリドールのコミュニケーションとチャレンジ
─ 生活者が「購入を決めるきっかけ」とは? マクロミルの計画購買調査から考える
─ 現代の消費を紐解くキーワード:リキッド消費/トキ消費/応援消費/界隈消費/消費の好循環/パルス型消費
合理的な利用と失敗リスクの低減を叶える
パナソニック株式会社
コンシューマーマーケティングジャパン本部
ダイレクトEC戦略課 係長
峯村和典(みねむら・かずのり)氏
2015年よりメーカーダイレクトECの業務に従事。商品担当として販促企画経て、ECのインフラにかかわる決済・物流・コールセンターといったフルフィルメントの改革や新規事業を推進。直近ではサブスクリプション型のサービス企画を担当。
パナソニック株式会社
コンシューマーマーケティングジャパン本部
ダイレクトEC戦略課 主務
大崎亜美(おおさき・あみ)氏
量販店向け家電マーケティング業務を経て、2021年よりメーカーダイレクトECの業務に従事。パナソニックストアプラスでの家電サブスクリプション型サービスおよび自治体連携のサブスクリプション型サービスの企画を中心とした、新規事業を担当。
パナソニック株式会社
コンシューマーマーケティングジャパン本部
ダイレクトEC戦略課 主務
加藤亮平(かとう・りょうへい)氏
2013年に大手EC企業に新卒入社し、ECマーケティングの企画や販促施策に従事。2020年にパナソニックに転職後、メーカーダイレクトECの価値向上を目指し、戦略的なマーケティング施策や企画を推進している。直近ではサブスクリプション型のサービスをはじめとする新規事業の企画を担当。
──まずは、定額利用サービスの概要を紹介いただけますか?
峯村:当社では「ヘアードライヤーナノケア」や、パーソナル食洗機「SOLOTA」などの商品単位でサブスクプランを用意しています。プランごとに設定した月額料金を支払い、当該商品を使う仕組みです。商品の交換や修理に費用は一切かかりません。契約期間が満期を迎えた場合は、商品をお客様に進呈しています。
家電、特に美顔器や一眼カメラは使いこなすハードルが高いジャンルです。せっかく定額利用サービスを契約いただいても、商品を利用できなければ意味がありませんから、当社のスタッフや外部の専門家がオンラインでフォローアップするような付帯サービスも特典として提供しています。カメラ講座の「LUMIXアカデミー」などはその一例です。
──主な利用者層はどのような方々ですか?
峯村:定額利用サービスの契約者と商品の購入者で、属性はそれほど大きく違いません。前者の年齢層が若干低い程度です。パナソニックストアプラス全体で見ると40代以降のお客様が多い一方、定額利用サービスに範囲を限ると20代や30代の契約者数が多くいらっしゃいます。
──サブスクリプション型のサービスを始めるに至った背景も教えてください。
峯村:多くのサブスクサービスがそうであるように、消費者の価値観の変化は背景の一つです。所有に価値を見出す方が多かった時代を経て、現在は「所有<利用」のニーズが高まりつつあり、「失敗したくない」「購入する前に試してみたい」という声も増えています。当社が扱う家電ジャンルは高価格帯の商品が多いため、サブスクを通じたトライアルのニーズは一層高いはずです。仮説の検証を兼ねて、定額利用サービスをローンチしました。
──人々の暮らしと密接に関わる家電は、価値観や生活スタイルの変化の影響をもろに受けると思います。
峯村:そうですね。最近は「必要なときに必要な分だけ使いたい」というニーズが高まっているため、たとえば単身赴任の期間中や、元々使っていたものを修理に預けている間だけ、当社の定額利用サービスを利用する方もいらっしゃいます。