売り切り型では得難い解約者の声にもヒントが
──消費者のインサイトや消費スタイルの変化を御社ではどのように捉えていらっしゃいますか?
峯村:パナソニックストアプラスを利用いただくためには、当社の会員プログラム「CLUB Panasonic」に登録いただき、パナソニックストアプラスのショッピング規約に同意していただく必要があります。インサイトは当社の会員情報をはじめ、アンケートで集めるお客様の声などから捉えています。
加藤:お客様の声を聞くことは企業全体で大切にしていますが、ただ声に耳を傾けるだけでなく「なぜその意見に至ったのか」を深掘りすることがマーケターの仕事だと私は考えています。アンケートで商品購入の決め手を尋ねると、大体の方が価格の安さを挙げるんです。良いものが手ごろな価格で手に入るのは当然喜ばしいことですが「なぜ安さを重視するのか」を考えると、実は価格がネックになっているわけではなく「買い物で失敗したくない」というインサイトが見えてきます。定額利用サービスや付帯メニューを設計する上で、このような顧客視点は強く意識しているポイントです。
大崎:定額利用サービスでは、お客様の解約時にアンケートを実施しているのですが、このアンケートで得られる回答にお客様の本音が最も如実に表れると感じているため、自由記述の回答は一つ残らず目を通してサービスの改善や新しいサービスの企画に活かしています。商品を購入いただいて終わりではなく、商品を使わなくなるタイミングでも接点を持てるのは、サブスクモデルならではの特徴かもしれません。
峯村:商品の開発を担当する部門とも連携しているため、お客様から頂戴したフィードバックを共有して商品のアップデートや新商品の企画に活用してもらっています。また、各商品のマーケティングチームにも共有してコミュニケーションプランのヒントにしてもらうこともあります。
──最後に、皆さんの展望をお聞かせください。
大崎:お客様の生活に密接した生活必需品としての家電にもアプローチし、定額利用サービスで扱う商品のラインナップを拡充したいです。食洗機の定額利用サービスを通じて、単身赴任におけるニーズを捉えることができたため、ポテンシャルは高いと考えています。
加藤:私も今より多くの商品を定額利用サービスで扱うことにより、ミドルファネルのお客様に対する接点を強化したいです。様々なメーカーが家電を扱う中「パナソニック」が少しでも上位に想起されることを目指しています。
峯村:パナソニックという社名の若年層における認知度は、まだまだ拡大の余地があると感じています。メーカーとしてお客様の暮らしに貢献するためには、まず知ってもらう必要があるため、定額利用サービスで商品を手に取る機会を増やし、企業の認知拡大にもつなげていきたいです。
当社は今年4月に「Panasonic Factory Refresh(以下、PFR)」というリファービッシュ品(メーカー再生品)の新ブランドを立ち上げ、定額利用サービスでも扱っています。過去に定額利用サービスで返却された商品などを検査・清掃し、再生品として定額利用していただくものです。サブスク自体が売り切りよりも環境負荷の少ないモデルと言えますが、PFRによってさらなる循環の仕組みを生むことができます。最近は事業活動のサステナビリティを重視する消費者も増えているため、PFRと定額利用サービスで企業/ブランドの価値向上にも貢献したいです。
