クリエイティブ作業を効率化する「Adobe Express」「Adobe Firefly」
「生成AI元年」といわれた2023年。ChatGPTを始め、画像やイラストを自動で作れる多くの生成AIの登場が話題を呼んだことは記憶に新しい。2024年も、その流れを加速させる新製品が各社から続々とリリースされている。今回のセッションでは、アドビの最新生成AIアプリを使ってオリジナルのLINEスタンプを作る手順が紹介された。
はじめにアドビのマーケティングスペシャリストである有川氏が、同社とLINEヤフーとの協業関係を解説した。
「アドビは2023年、LINEヤフーとクリエイティブ創作支援のための協業を発表しました。これにより、ビジネスやエンターテイメント領域において、あらゆる創作活動を支援していきます。当社のプロダクトとLINEヤフー社の広告クリエイティブ作成ツール『LINE Creative Lab』の連携など、双方のプロダクト連携の他、今後はクリエイティブ講座の開催やノウハウの提供など教育にも注力していく予定です」(有川氏)
続いて有川氏は、アドビの2つのソリューションを紹介した。それが、LINEヤフーの「LINE Creative Lab」と連携する「Adobe Express」と「Adobe Firefly」だ。
「Adobe Express」は、誰でも無料でSNS投稿用コンテンツやショート動画、ロゴやチラシなどが作れるオールインワンのデザインアプリ。LINE公式アカウント用の画像や、友だち追加広告用の縦型動画など、600種類以上のテンプレートが用意されている。
画像生成AIである「Adobe Firefly」は、商用利用の安全性を意識して設計されているのが特徴だ。先述した「Adobe Express」はもちろん、「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」などの製品に広く実装される。
使い方は、「プロンプト」と呼ばれる説明文や単語を入れることで、画像やイラストの生成、文字の装飾、写真の加工などができる。アドビの写真ストックサービス「Adobe Stock」やオープンライセンスコンテンツなどを通じて生成AIモデルのトレーニングが行われているため、商用利用も安心して行える。
さらに「Adobe Firefly」では、プロンプトでクリエイティブを生成するだけでなく、既存のデザインやサンプル画像となるデータをアップロードすることで、よりイメージに近い画像を生成する「スタイル参照」「構成参照」という機能がリリースされている。
動画クリエイターも愛用!「Adobe Express」の魅力とは
続いて、仙台を中心に活動する男女コンビ動画クリエイター「じゅんびナウちゃんねる」のキング社長氏とちづもん氏が、「Adobe Express」を使ってオリジナルのLINEスタンプを作成する様子を紹介。普段からアドビ製品を使って動画製作に取り組んでいるキング社長氏は、次のように話した。
「最近では、LINE VOOMやYouTubeのサムネイルも『Adobe Express』で制作しています。今回、普段とは違うハウツー系動画の製作にチャレンジしたのですが、テンプレートを使うことで簡単にクリエイティブを作ることができました。非常に便利なアプリです」(キング社長氏)
有川氏も「Adobe Express」の操作の簡単さについて、キング社長氏に同意。「私もマーケティングの仕事をしているので、簡易的なグラフィックやバナー、見出し画像などを作る機会が多いです。そんな時、この豊富なテンプレートを非常に重宝しています」と語った。
プロンプトで、スムーズにクリエイティブを作成
セッションでは「じゅんびナウちゃんねる」の二人が、「Adobe Express」を使ってオリジナルのLINEスタンプを作る方法を、ハウツー動画を用いて紹介した。ちづもん氏が描いたイラストを「Adobe Firefly」に読み込ませてデザインを生成し、「Adobe Express」を使って文字を付けていく手順だ。
有川氏は動画を見ながら、「ご自身のイラストを『Adobe Firefly』の“スタイル参照画像”にアップロードすることで、元画像のタッチや色味を反映した画像生成に成功しています。加えて『髪を長くする』というプロンプトを指定したことで、新たなデザインを生成しました。応用した使い方をされているな、と思います」と解説した。
また、生成されたデザインが元のイラストにはなかったコアラの人形を持っていることについて、ちづもん氏は「元のイラストでは違うアイテムを持っていたのですが、『イラストにコアラの人形を持たせる』とプロンプトを入力しただけで、それが適用されたデザインとして生成されたので驚きました」とコメントした。
作業効率アップで、メンバーが一人増えたような感覚に
今回、初めて生成AIを使ったLINEスタンプ作りに挑戦した感想を、「じゅんびナウちゃんねる」の二人は次のように話した。
「私は普段、ファン向けのアイコン用イラストなどを描いていますが、デザインを考えるのに多くの時間と手間をかけていました。しかし、『Adobe Express』を使えば簡単に作成できることを実感しました。他にも多くのテンプレートが用意されているので、色々なことを試していきたいです」(ちづもん氏)
「『Adobe Express』『Adobe Firefly』があることで、まるでメンバーが一人増えたような感覚です。特に感動したのは、僕が想像したものに対してさらにアイデアを上乗せした形で返してくれる点です」(キング社長氏)
それに対して有川氏は、アドビは生成AIを“クリエイティブをサポートする副操縦士(コパイロット)”として位置付けていると説明。「まるで面倒な作業をしてくれるアシスタントのような存在だともいえます。生成AIが、ユーザーがクリエイティブな活動により高次のレベルで集中できるように、創作をサポートする存在になったらいいなといつも考えています」と話した。
また有川氏は、ちづもん氏のように、イラストの良さはそのままに様々なバリエーションを作ることで、クリエイターの生産性アップにもつながると解説した。生成AIがアイデアのネタを考え、手間のかかる下準備をしてくれる存在になる日は近そうだ。
スマホアプリ版で隙間時間も有効活用
セッションの最後に、今後アドビのAIソリューションが二人の活動でどのように役に立つと思うかを質問。ちづもん氏は「AIにデザインを考えてもらうという、新しい関係ができた」と語り、作業の行き詰まりもなく効率的に時間を使えそうだと話した。キング社長氏は、「自分の欲しいイラストを両アプリでサクッと生成して、動画などに活用していきたい」と制作への意気込みを語った。
二人の話を受け有川氏は、「『Adobe Express』は、アプリをインストールいただければスマホでも簡単に作業ができます。移動が多いお二人には、隙間時間をコンテンツ製作に有効活用するためにもぜひ使っていただきたいと思います」と話し、同セッションを締めくくった。
「Adobe Express」を使った缶バッジ作りに挑戦
今回、MIYASHITA PARKの屋上の芝生広場にあるイベント会場エリアに「Adobe Express 缶バッジ工房」が出現。
同ブースでは、参加者は「Adobe Express」を使ったオリジナル缶バッジ作りを体験できる。スマホアプリ版「Adobe Express」をインストールし、フォーマット内に好きな画像やテキストを入れると、そのデザインの缶バッジがもらえるのだ。
同ブースの出店について、担当者は「アドビというと、プロ向けのツールというイメージが強く、利用者はコアなクリエイターの方が多い印象をお持ちの方も多いかと思います。『Adobe Express』のアプリは誰でも無料から利用でき、直感的に操作しやすいので、生成AIを使ったクリエイティブも気軽に作成いただけます」と説明した。
ブースでは、ビジネスパーソンはもちろん、若い方から年配の方まで様々な層がバッジ作り体験に参加。バッジ作りを行った参加者からは、「アドビのソフトの初心者でも、このアプリなら簡単に使える」といった感想が聞かれた。