やる・やらないを「分類×フェーズ」で判断する
顧客の購買プロセスは、「顧客にニーズがないフェーズ」「初回購買のフェーズ」「継続購買のフェーズ」といった分け方が考えられます。先ほどのビジネスの分類と、アプローチしたい顧客のフェーズの掛け合わせで実行すべき施策が絞り込まれていくわけです。

仮に「コンテンツマーケティングをしよう」と思っても、行う状況でその内容は大きく違いますよね。たとえば、ターゲットの企業数が10社しかないビジネスで、継続購入フェーズだったら、「(業界大手の)〇〇社に深く刺さるホワイトペーパー」を作り、営業がそれを用いて商談の機会を得られるようにするわけです。一方、ターゲットの企業数がとても多く、顧客の商品知識も豊富というビジネスで、初回購入フェーズなら、商品情報を網羅的にWebサイトに掲載してSEOに注力するのが良いでしょう。
また、先進的な商材を扱うベンチャー企業で顧客のノウハウが乏しく、顧客にニーズがないフェーズなら、そもそもコンテンツマーケティングはしなくて良い。さらにいえば、「LPを用意し、広告やSEO記事で飛んでもらい、インサイドセールスが架電、商談を獲得してクロージングという流れにしましょう」あるいは「マスに向けてテレビCMも打ちましょう」というのはよくあるケースですが、自社の状況を鑑みずに「やるべきこと」だと認識してしまっている方はかなり多いです。やる、やらないの判断も「ビジネスの分類」「顧客のフェーズ」で選び、やらなくて良いことを把握するのが重要ではないでしょうか。
よくあるパターンで打ち手を考える 「製造業」なら?
━━よくあるBtoB事業とそのフェーズを例に挙げて、その場合に考えられる打ち手を具体的にお教えいただけますか?
では一つ目の例として、「古くからある製造業」で考えてみましょう。中小企業向けに卸していてターゲットの企業数は一定以上あり、古くからあるので既存顧客リストも非常に多く、顧客の製品に対する知識量は多いと仮定します。
この場合、リストはあるので、新規リストを作る施策の優先度は低くなります。最初にやるべきは既存リストの掘り起こしです。営業が持っている名刺をすべてデジタル化し、CRMを構築します。メールや郵送物を使って商談のニーズを検知する仕組みを作る、ということです。ただ、当然それだけでは営業組織が動きづらい。アプローチしたい企業のすり合わせをしながら、必要に応じてインサイドセールスを設置して商談化させていきます。このように、既存顧客リストで回りきれていない部分を売上に変えていく施策から始めます。
その後、新規顧客を獲得したい、既存顧客のニーズをより多く検知するためにメール以外も使いたいと考えたときに、Webサイトの活用が選択肢になります。
このようなビジネスの場合、顧客が自身でスペックを調べて購買するため、商品情報を漏れなく記載しておくのが重要です。カタログをそのままアップするのでは検索にかからないため、データベースを作り、それに基づいたWebサイトにすることで検索上位を狙う、つまりSEOを行います。加えて、Webサイトへの訪問者を特定し、マーケティングオートメーション(MA)で商談化します。このときにも営業組織が動きやすくなるために、インサイドセールスとの連携をセットで行うのは重要でしょう。
さらに、既存顧客リストにアプローチし尽くして反応が悪くなってきたら、新規リストを多く作る施策として、展示会に出るなどの施策が考えられます。グローバルに展開できるビジネスならWebサイトのグローバル対応、LinkedIn対応も広げていくというのも手です。
二つ目に、「BtoBのSaaSを扱うベンチャー」で考えてみましょう。このケースの場合、ターゲットは中小企業で多いとしても、新しいサービスであることからニーズが顕在化していない、あるいは顕在化していても顧客の製品知識は豊富ではないことが多そうです。ベンチャーなので顧客リストはない状況と仮定します。
