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BtoBマーケティングの打ち手を再考する

BtoBマーケティングの打ち手をどう決める?WACUL垣内さんに聞いた整理・判断の基準

「SaaS系ベンチャー」「大企業向け商材」の打ち手を整理

━━このパターンの打ち手をお教えいただけますか?

 まず、リストを作る必要があるので、展示会への参加、リスティング広告への出稿、さらにディスプレイ広告でホワイトペーパーを配るなどして集めていきます。そこからはインサイドセールスがこのリストからアポを取ってフィールドセールスが回っていく、という流れです。ただ、SaaSというビジネスではその後のチャーンレートが非常に重要です。導入してもすぐに解約されてしまい、ザルのように抜けていくのでは意味がなくなってしまいます。そこで、新規リストがある程度取れてきた段階でオンボーディング施策を設計しなければなりません。

 オンボーディング施策が軌道に乗ってきたら、マスに展開するという流れはあるあるでしょう。ただし、最近は金融環境があまり良くないため、元が取れないケースも増えてきているというのが実情です。コンテンツSEOも大手ドメインが上位になりやすいため、難しいことも。ベンチャーなら特に、これらのあるあるを「普通」だと思って考えなしに行うのはお勧めしません。業界紙のベンチャー枠を狙う、本を出版するという広報活動の手もあります。

画像を説明するテキストなくても可

 よくあるパターンの三つ目として、「大手企業向け商材を扱う企業」の場合でも打ち手を考えてみましょう。対象となる企業は先述の二つよりもかなり少ないとして、リストの有無は「多少は接点がある」程度だと仮定、顧客の商材に対する知識量は多いことも少ないこともあるので、ここでは特に決めないでおきます。

 この場合、営業がターゲット企業のキーパーソンに会えるかどうかが最も重要です。既に会えているなら、改めて会う理由を作るためにその人に向けたコンテンツを作る施策が有効でしょう。まだ会えておらず、キーになりそうな人を見つける段階なら、リスト作りが必要です。

 たとえば、対象企業の技術職が1,000名程度でそのなかの課長・主任クラスに当たっていくとしたら、リストも足りていないし、異動もあり得ます。社内向け展示会、専用のWebサイトを用意し、対象企業内のキーパーソンリストを作るのが有効です。このリストができたら、MAで各人の動きに合わせてアプローチし、その反応をアカウント営業担当に伝えるという流れになります。テレビCM、リスティング広告、公に向けたWebサイトは必要ないといえるでしょう。

━━多くの企業に共通して行うべきことはありますか?

 顧客の状況を検知する仕組みはいずれにせよ必要です。顧客のデータを収集、管理するために、SFA(営業支援システム)、MAの実装には取り組まなければならないと思います。

AIを対外的に活用するための「責任を取れる仕組み」

━━BtoBマーケティングにおける現在のトレンドや今後重要になると思われるトピックを教えてください。

 先述の通り、「営業自身が足を使って取ってくる」から「マーケティングデータに基づいて行動する」に舵を切る企業は着実に増えています。見過ごせないトピックの一つとしてはAIの活用でしょう。ここから飛躍的に伸びていくと思います。社内の活用だけでなく、顧客への受け答えといった社外との接点にもAIが使えるようになると世界が大きく変わりそうです

 人間がミスをすることなんてザラにあるなか、カスタマーサポートをAIでなく人間が担っているのはなぜでしょうか。それは「人間なら責任を取れるから」ですよね。責任を取れる仕組みが作れれば、BtoBの顧客接点であってもAIに任せても良いと思うんです。一方で、社会が「AIでも良いよね」というムードに変わっていくことも予測されます。そうなれば、本当はなくしてしまいたいような業務あるいは教育を減らして、優先したいことに注力できるようになるでしょう。AIの学習にも必要なデータの整形は重要になりそうですね。

━━最後に、BtoBのマーケティング現場の方々にアドバイスを一言お願いします。

 今回の内容をごく端的にいえば、「打ち手から入ってはダメ」ということです。よくある「成功事例」であっても、自社の状況とのフィット感がなければ、真似しても絶対に上手くいきません。今回お話ししたことはいずれも、実行するには営業とのコミュニケーション、社内調整が不可欠です。まずは自社のビジネスの特性、現在の状況を把握し、営業との共通理解を育むこと、それから打ち手を考えていきましょう。

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45973

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